WWNウエルネス通信 (2023年2月26日):「いつまでもおいしく食べる」

先週金曜日(2月24日)。

毎月恒例の「いつまでも美味しく食べる研究会(通称AB研)」を開催した。

早稲田に研究室を構えた2017年12月から、ほぼ毎月開催して丸5年。累計54回目を数える。

最初は、「おいしさとは何か」から始まり、「なつかしい味」「思い出の味」と続き、4回目の「長野県の長寿」から2年ほどは地域ごとの「おいしさ」の由縁を探っていった。

その後、食材ごとの「おいしさ」を探求して現在に至っている。

今回のテーマは「あるもので料理」。

初めて参加する方は「単なる飲み会」と戸惑うこともあるのだけれど、(主幹の新原さんと)私にとっては、「最期まで如何においしく食べることができるのか(その方法論を開発する)」という壮大な使命感を抱いた研究会なのだ。

「壮大」とは大げさな。と思う方がほとんどだろうけれど、「終末期の療養者」の食生活が必ずしも充実しているわけではないという問題意識から始まったことで、毎日の食事を「おいしい」と満足して食べている方が意外と少ないのではないかという問題へと発展し、ご自身が「何を美味しいと思うのか」を言葉にできることの大切さ、そしてそのためには自分で料理できる(少なくともどうしたらその食事が産み出されるのかを理解できる)ことが重要だということがわかるようになった。

「料理」とは、台所から始まるのではなく、食材や調味料を入手(購入)して準備することや、余った食材を保存・再利用するところまでの「食コンテンツの流れ(横軸)」と、それを食べられるようにする調理器具(コンロやレンジも含む)と食器さらには洗浄・保管といった「用品・器具の流れ(縦軸)」があって、いわゆる料理教室や料理番組などで教えられている情報は、そのど真ん中の交点の調理場面だけなのだということも、私たちの重要な気づきであった。

つまり、(コロナ禍で注目を集めた)数々の料理番組で展開される「調理場面」や、レシピサイトで展開される「作り方」記事を真似ることから始める「料理技法」は、その交点の周囲にある(縦軸と横軸の)前後のかかわりも含めて「できる」ようになることが、各々の方々が「自分のおいしさ」を見つけ出す原点なのだということが、今回の「あるもので料理」というテーマに帰結したということである。

と、長々と理屈を並べてしまったけれど、結局のところ、

 1)美味しく食べるためには「自分にとって何がおいしいのか」に気づく(言葉にできる)ことが必要。

 2)自由にグルメ外食できる人や病室・療養室にまでもシェフを呼んで食べたいものを食べられる人を除いては、自分で作れる(作ってもらえる)環境と技術が必要。

 3)スーパーで購入した食材を朽ちないうちに使い切る智慧や知識も料理技術の一つ。

ということ等々が、これまで5年間(50回超)の実践研究の蓄積を経て私たちが会得した知見だということ。

そして、「あるもので料理」というテーマを乗り越えた後に、「それらの知識を身に着けるための実践技法を開発する」という、私たちがこれから進むべき課題が見えてきたというわけ。

例えば、自分で料理を始めようとする人がまず最初に手掛けるべきことは何か?

先回のAB研の最後にたどり着いた第一段階としては、以下の順番が想定された。

 a)スーパーやコンビニで買ってきた惣菜・食事を皿に並べること。

 b)レンジで温めたり包丁で切ることで食べやすくすること。

 c)使った食器等を洗うこと。

そのために必要な最低限の調理器具や食器は何か?

というようなことを考えている中、

 「世界一美味しい手抜きごはん~最速!やる気のいらない100レシピ」

 「やる気1%ごはん~テキトーでも美味しくつくれる悶絶レシピ500」

という書を見つけて早速購入。後者には、「基本!よく使う調味料」「楽できる調理器具」という見開きページがあって、「それだけで十分」という「最低ライン」が提示されていたので、

 「むむむ、既に刊行されていたか」

と身構えたのだけれど、最初のメニューが「豚バラ半熟卵」という難易度で、まさに「交点」だけしか示されておらず、その購入や前準備まで含めると、とても「やる気1%」ではできそうもない。

 その「最初の壁」を乗り越える道のりこそが重要なのだ。

と言いつつ、今朝の日経新聞朝刊の折り込み記事の中に、

 「最初はご飯を炊いて卵かけご飯からで十分」

というメッセージを見つけた。

そういえば、25年前に私が(最初の2か月間だけ)単身アメリカに暮らした際には、炊飯器と手持ち鍋を購入して、毎朝「ごはんとみそ汁」を作って食べたところから、私の調理体験が始まったことを思い出した。

「はじめての料理を修得する24のステップ~おいしさマスターへの道~」などといった著作をまとめることが、今年のAB研の目標になりそうな気がする。

次回のAB研は、「3月10日(金)」に開催します。

Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男

http://wasedawellness.com/

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