WWNウエルネス通信 (10月9日):「痛みを感じる」ということ

 私のゴルフ仲間のSさん(60歳代・男性)は、以前から腰の不調(腰痛)を訴えることがあり、「ぎっくり腰」になったといって休むこともあった。今年に入って「脊柱管狭窄症」という診断を受けたとかで、しばらくゴルフを休んでいた。

 先月、久しぶりに姿を見かけた。なんでも、かかりつけ医から「名医」を紹介されて診てもらったところ、

 「手術で治すことはできる(失敗しない)けれど、Sさんはゴルフをやりたいのだから、よく歩いて筋肉をつけて治す方が良い」

と、アドバイスされたのだとか。

 そこで、乗用カートを借りておそるおそるラウンドしたところ、時々痛みを感じるときもあったらしいが、スコアを気にしなければ何とか回れたとのことで、「痛みの出ない動き方(スイングや歩き方)」を模索しながらゴルフを楽しむことができそうだと喜んでいた。

 私も先日、ラウンドしながら右ひじ下の筋肉(尺側手根屈筋)に張りのような違和感を覚えた。これまでに経験したことのない感覚だったし、ボールを打った直後に「痛み」を感じることもあった。

ちょうど夏前から硬いシャフトのクラブを使ってスイングの改善を試みていたので、「打ち方」に問題があるのではないかとあれこれと試してみた。つまり、

 「痛くなるのは打ち方が悪い」=「痛くならないようなスイングをする」

という考え方で、素振りをしながら「張りを感じる部位が緊張しないようなスイング」ができるように留意してみたのであった。

もちろん、その「痛み」は、ボールインパクトの際のショックで起こるわけなので、ボールを打つ瞬間(ダウンスイング時)に右手の握力を弱めるように(実際には右手の握りを緩める感覚で)打つようにしたところ、痛みが起こらなくなった。それどころか、打球が左に引っかかることなくまっすぐ飛んでいくので、「これが正解」だと合点した。

 そのような「痛み」を感じたのは、その日のそのラウンドだけだったので、おそらくはスイング改造しながら色々な打ち方を試す中で、たまたまその症状が現れたのだろう。

そもそも、ゴルフに限らず歩きや立ち座りなども含めて、日常の様々な動作には様々な筋肉がかかわることができて、同じような動作をしているようで、筋肉の使われかたが異なることも多い。だから、くだんのSさんも、椅子に座ろうとして「痛み」を感じるときもあるし感じないときもあるだろう。

 つまり、「痛み」は「悪い動作」を教えてくれるリトマス試験紙のようなものともいえる。

「痛み」が生じないうちに、わずかな「張り」や「負担感」などで動作の異常を察知できれば、痛みにわずらわされることなく生活を送る事ができるのに、多くの人は痛くなってから初めて異常に気が付く。さりげない「動作の癖」も、積もり積もって痛みをもたらす原因になることもあるのだ。

逆に、「バランスの良い動作」や「関節や筋に負担が少ない動作」をしていれば、「痛み」が生じる可能性は限りなく低い。

このように考えると、「痛み」を感じたとしたら、それは「どうしたら(どのように動けば)痛みが弱まるか」と試行錯誤するチャンスになると考えることもできる。

もちろん、「どうやっても痛い」と感じている方には、このような言い方は慰めにもならないかもしれないが、「医者でも治せない痛み」は、自分で対処するしかないのだから、せめて「苦しみ」ではなく「期待」に結び付けるような考え方を目指したほうが前向きな人生を歩めるような気がする。

 Sさんが出会った「名医」のアドバイスは、至言なのだと思う。

Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男

http://wasedawellness.com/

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