WWNウエルネス通信 (8月15日):「楽に歩く」という身体技法(再)

これは以前(1/24)に配信したことなのだけれど、

》「正しい歩き方」として伝承されている「歩き方」は、

》「健康づくりのため」と称して、

》「身体の負荷(エネルギー消費)をもたらすこと」

》を目的として推奨された技法であり、

》「日常を穏寧に過ごすためには、《楽に歩く》ことが大切だ」

ということを論じたことがあった。

その後、2月には、「歩き方」についての「大発見」について立て続けに配信したので、うっすらと覚えている方もいるかもしれない。

※2月分の記事はこちら → https://yoshionakamura.jp/2021/02/

縁あって、JWI(Japan Wellness Inovation)がフィットネス指導者向けに配信している連載に、その内容を転載することになったのだが、それを機に精査・改訂していたところ、奥田さんから、「楽に」という表現が「怠ける」という意味にも通じるという可能性を指摘された。

》 私は、「楽に歩く」は、「怠ける」の意味でなく、

》 「体への負担を少なくして、運動器を長持ちさせる」の意味と伝えています。

とのこと。

》 フルマラソンに再度参加したい高齢男性や、

》 卓球が大好きだけど毎晩足がつる男性など、

》 強く痛いトレーニングが好きな人が多いので。

とも付されていて、「強く痛いトレーニング」を必要とする方にとっては、「楽」という言葉は否定的な意味を持つ可能性があるというのは、私にとっては逆の意味で「眼からウロコ」だった。

 そこで改めて感じたのだけれど、そもそも「フィットネス」というムーブメント(社会運動)では、「身体に負荷をかけること」=「エネルギーを消費すること」が重要視されていて、「如何に負荷をかけるか」という身体技法が様々に開発されてきたのだ。

 その典型は、「エアロビクス」。

 それまでは、身体の運動は筋肉の動きから生まれるものであり、トレーニングとは「筋肉に負荷をかけること」と信じられていたのだが、1968年に発明された「エアロビクス」という身体技法では、「心臓に負荷をかける」という考え方を前面に表出して、「全身運動」という言葉を生み出したのだった。

 もちろんそれは突然に発見されたのではなくて、1950年頃から運動科学の分野で盛んにおこなわれていた「身体運動のエネルギー消費量」の測定と、その最大能力の評価という科学的知見を前提として生まれた概念だったのだけれど、「エアロビクス」という言葉は、「エネルギー消費」=「体脂肪の減少」という実利的効果ともあいまって、あっというまに世間に広まった。

 その他にも、「ストレッチ」という身体技法の発明の影響も大きかったし、「筋トレ」についても安全で効果的な技法が(マシン開発とともに)次々に開発されていった。「ヨガ」や「太極拳」といったスピリチュアルな身体技法もまた、その「エネルギー消費量」が測定・評価されたうえで、「フィットネス」のムーブメントに組み込まれていったのだった。

なんか、このような理屈の説法はこのウエルネス通信には不向きなのだけど、

  「そもそも健康運動は生活の必要以上に身体負荷を与える技法だ」

ということだけは、強調しておきたい。

 その「必要以上の身体負荷」が「必要」になる場面も多いので、その大切さは十分に尊重したうえで、

  「日常を穏寧に過ごすためには、《楽に歩く》ことも大切だ」

ということもまた、繰り返しておきたい。

Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男

http://wasedawellness.com/

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