【20】「痛み」から解放されるための最初の一歩 その2

前回「第19回」では、「椅子からの立ち上がり」を例にとって、「楽に動ける」という考え方を紹介した。その動きのコツは、「椅子から」ではなくて「床から」立ち上がる場合にも応用できるのだが、日常生活のあらゆる動作を〈楽に〉行うことによって、筋膜連鎖における〈コリ〉が発生するのを防げるし、関節の痛みも生じにくくなる、ということだ。

 「痛みから解放される=コリの発生を防ぐ」ためのもう一つの技は、身体の歪み(アンバランス)の解消。

 日常生活の何気ない所作・動作が、身体各部の姿勢の歪を生じるとともに、〈膜〉を伝わる力の伝搬の不均衡をもたらす(=〈コリ〉の原因となる)ので、「姿勢の不均衡」が整えば〈コリ〉が生じにくくなる。

 例えば、

① 椅子座位姿勢で、両腕を胸の前で交差して両手掌で対側の胸を触る。

② その姿勢から、頭から骨盤までの背骨を軸として、ゆっくりと回旋して左を向く。

③ 元の姿勢に戻して、今度は反対に回旋して右を向く。

④ 上記の左右の回旋を比べて、どちらが楽でどちらが窮屈かを感じる。

⑤ 楽に感じる側の骨盤(座骨)の下(座面との間)に、2~3cm程度の厚みのタオルをはさんで、もう一度、さきほど窮屈だと感じた側に回旋する。さっきよりも楽に感じていることに気づく。

⑥ 尻下に挟んだタオルを取り除いて、左右回旋を比べる。(さっきよりも均等になったと感じる)

 これは、「操体法」と呼ばれる技法の一部(変法)なのだが、基本的には、〈窮屈〉と感じる側の動きが楽になるように仕向けて動かすことによって、そちらの動きを制約していた〈膜〉の操作性を改善する。

 もちろん、本格的な筋膜マニュピレーションのように〈コリ〉を解消することはできないのだが、ほんのちょっとの姿勢変化によって〈楽な動き〉を誘発して、〈膜〉に作用する力のバランスを整える。「筋膜リリース」というのは言い過ぎなのだが、あくまでもアバウトな表現として「膜リセット」とでもいえるのではないかと密かに考えている。

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