ワクチンの高齢者接種率(1回目)が3割を超えたという。
一日100万回の接種も目前だし、ほぼほぼ希望者全員が予約を取れる状況のようなので、「7月末までに高齢希望者全員完了」の目標達成も現実のものとなった。
それにしても、先週報じられた「中学生の集団接種やめ個別へ 抗議殺到の京都・伊根町」というニュース(※1)は、衝撃的だった。
人口2000人余りの伊根町では、65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人のほとんどが1回目の接種を終え、2回目の接種や追加のワクチン供給のめどもたったことから、6月4日からは64歳以下の一般接種も本格的に始め、6日からは12歳以上の児童や生徒にも対象を広げたという。
そのことが6日のニュース(※2)で報じられたことがきっかけとなったと思われるのだが、子どもへの接種に反対する抗議の電話やメールなどが7日から8日までにおよそ200件寄せられたという(※3)。
町は混乱を避けるために、下旬に予定していた町内唯一の中学校での集団接種をやめて、個別接種に切り替えることにしたとのこと。「抗議はほとんどが町外からで、小中学生の保護者は接種を希望している人が多い。医師の協力も得て安全性を発信していく」との町担当者の言葉も報じられた。
一方で、抗議の中には「人殺し」「殺すぞ」などと職員を脅迫するような内容があったとのことで、いったいこの「抗議」の正体は何なのだろうかと、町とは無関係の私としても心を痛めたのであった。
伊根町でワクチンの接種の対象になったのは、65歳以上の高齢者およそ1000人、16歳から64歳の人およそ850人、12歳から15歳の小中学生およそ40人のあわせておよそ1900人。これに対して、国から配布されたワクチンは1492人分(ファイザー社製ワクチンの輸送単位は195本・975回分なので3箱届いたのであろう)とのこと。しかし、これは1つの容器から5回分がとれる注射器を使った場合の人数で、伊根町ではインフルエンザの予防接種などで使われる7回分とれる注射器を主に使用してワクチンを「節約」しているため、必要な数を十分まかなえるということだった。
6日に報じられたニュースではこのことも同時に報じられていたのに、「中学校でワクチンの集団接種」ということによほど我慢がならなかったのだろうか。
確かに、「12~15歳の子ども」は重症化リスクが少ないのだからワクチンを打つ(リスクを冒す)必要がないのではないかという意見があることは承知している。でも今回は厚生労働省がワクチン接種を推奨しているのに、本人や保護者でもない方が「けしからん」と抗議するのはいかがなものだろうか。ご本人がワクチン接種をしない(拒否する)ことは本人の正当な権利なのだけれど、「ワクチンを打つな」とか「人殺し」などと誹謗することは許されない。ましてや、「殺すぞ」などという脅迫は言語道断である。
いったいいつから、日本にはこのような「けしからん抗議」がはびこるようになってしまったのだろうか。
コロナのおかげで生活に支障をきたしている方も多いことと思うし、政府の対応に不満をお持ちの方も少なくないと思うのだが、他人の行動を自分の思うままに強制しようとする試みは、許されないばかりか自身の安寧にもつながらない。
百歩譲って「子どもへのワクチン接種は危険」という思想の持ち主で、「ワクチンから子どもを守ろう」との正義感からの抗議であったとしても、それは「正義感の押し売り」に他ならない。科学的知識や情報は常に開かれているのだから、健康を目指す人々の行動は、一人ひとりの自身の判断が何よりも優先されなければならないし、誰かの思想を強制することなど許されないのだ。
日本全国(あるいは世界中)でワクチン接種を望んでいるすべての方々に、一日も早くワクチンが提供されることを何よりも望んでいる。
※1「中学生の集団接種やめ個別へ 抗議殺到の京都・伊根町」(6月8日、共同)
※2「京都の伊根町 ワクチン接種進み対象者広げる 高校生も接種」(6月6日、NHK)
※3「京都 伊根町 中学生の集団接種 抗議殺到で変更へ 被害届も検討」(6月9日、NHK)
Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男