「ここに問題のポイントがありますね」
と、吉田PTはしばらく加圧揉捏(じゅうねつ)を続けた。最初は痛みを感じたが、だんだんと和らいで足先や肩までじんわりとしてくるような気がしてくる。立って歩いてみると、それまでとは違って違和感なく歩けるようになっていた。
だが、そこからが本番だった。立位での〈目のトレーニング〉。
まずは、目を下に向けてそのまま下を見るように首を曲げて、胸を覗き込む。そこから逆に目を上に向けて、目につられて顔を上に向けていく。これを繰り返した後に、左右方向の回旋。目を左に向けて、一番左を向いた状態からさらに首を回して後ろを向くように回旋する。逆に、目を右に動かしてから首を回旋させて右後ろまで向く。
次に、両手の人差し指を顔の正面に横向きに交差させて、その指を上下に20cmほど離してオデコと顎の前あたりに来るようにして、目だけでその上下の指を交互に見るように動かす。数回繰り返したら、今度は指を立てて左右に30cmほど離して、目だけで左右を交互に見ることを繰り返す。
どうやら私は、身体を動かす際に、目が固定されて動かないとのこと。小脳に機能異常(低下)が起こると同様の症状が現れるので、リハビリのために〈目のトレーニング〉を行いましょう、と吉田PTから説明があった。
吉田PTによれば、その日の私は、
「両肩が内旋していた」
つまり、立位で両手の甲が前から内側を向くように腕が回旋している状態だったらしい。さらに、肩(肩甲骨)と頸・頭が前に出て、猫背になった状態でもあったという。
それは、
「小脳の機能低下で起こりやすい姿勢」
とのこと。
結局のところ、「太腿の裏が貼る~膝が痛い」というのも、小脳の機能低下が導いた姿勢の変化(異常)からもたらされたもののようだ。
《根本の原因》はどこにあるのか?
それを見極めることはなかなか難しい。
(続)
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