さて、吉田篤史PT(理学療法士)は、その後も、私のゴルフパフォーマンスの向上のために身体を触診しながら色々なアドバイスをしてくれた。もちろん、それは月に2回程度だから、その間、私の身体には様々な変化が生じた。
ある日のこと。交差点の信号が変わろうとしているので急ぎ足で渡った時に、右膝の裏に痛みを覚えた。
太ももの裏側の筋肉(ハムストリングス)に張りを感じたので、痛みの原因は、急ぎ足で脚を強く使った際にハムストリングスが過度に緊張してこわばり、そのために膝の裏が引っ張られたため、と私は確信した。
それまで吉田PTからは、
・痛みの原因は、痛い関節そのものにあるわけではないことが多い。
・過去の様々な障害(傷痕)や喘息などの内部疾患も含む疾病が、現在の痛みの原因となることもある。
と学んでいたので、私の《膝の痛み》の原因は膝関節自体にあるのではなくて、別の箇所、おそらくは太もも裏のハムストリングスにあるに違いない。そう思ったのだった。
こういう時、普通の人ならば、膝をさすったり、湿布を貼ったり、場合によっては医師から〈膝の水〉を抜いてもらったりするのかなぁなどと思いながら〈膝ぐるぐる体操〉をやってみたり、歩き方に気を付けて脚に負担をかけない〈ゆっくり歩き〉などを心がけたりしていた。
いろいろな動き方や歩き方を試して、太もも裏のこわばりと膝の痛みが少しずつ緩和していくのを感じながら、次の吉田PTの診察日を迎えた。
吉田PTは、小脳梗塞を患ったことがある私のゴルフの動作改善のための指導を前提として、前回の診療直後のラウンド結果を踏まえて、次の改善策を練ることを想定していたはずだ。それなのに、吉田PTの前に立った私はいきなり、前週に襲ってきた「右膝の痛み」ならびに、その原因としての「ハムストリングスのこわばり」について喋り始めたのだった。
静かに聞いていた吉田PTは、冷静に
「ゴルフはどうでした?」
と尋ねてきたので、前回の指導の後のゴルフの成果を話すこととなった。
「では、ちょっと診てみましょう」
と、ベッドに横たわった私の脚部を片方ずつ動かして触診しながら、
「肉離れは起こしていないようなので、別の原因を探りましょう」
と、足から太腿・股関節と、筋膜の異常部位を探していった。
触手は腹部から胸部へと移行し、喉ぼとけとみぞおちの間の胸骨のあたりで留まりながら、指背圧がだんだんと強くなっていった。ふと、吉田PTの動きが止まった。
「ここに問題のポイントがありますね」
吉田PTは言った。
(続)
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