10年ほど前に私の大学院(社会人)ゼミを卒業したF君から、本を出したとの連絡があった。タイトルは、
『リカバリー解体新書 ― 休養と疲労の構造がわかれば誰でも回復できる』。
》修士を取った頃には正直ここまで来られるとは思っていませんでしたが、
》今振り返ると、先生との出会いや、これまで何度も話を聞いていただいた
》時間があってこそだなと感じています。
とのことで、早速届けてくれた。
大学院時代の彼は、疲労回復を目的とした機能性ウエアを販売する会社の営業社員で、当初は「ウエア着用による自律神経系への効果を検証したい」と言っていたのだが、最終的には、「リカバリー」「回復」「疲労」などの効果を謳うウエア全般に関する調査を経て、それらの機能性ウエアに対するユーザーの期待と満足度に関する研究に落ち着いた。当然に、F君が売ってきた機能性ウエアの競合も含めたあらゆる類似商品に関する知識とユーザーの期待を総覧した彼の興味は、ただ単に「疲労を回復するためのウエアを売る」ということから脱却して、疲労回復のメカニズムへと広がっていった。
卒業後は、疲労回復に関するコンサルタントとして独立し、様々な企業の営業支援を行うとともに、「疲労回復」「休養」「リカバリー」という技術を必要とするアスリートやチームのサポート活動も行うようになった。数年前からは、独自の研究成果も積み重ねていたようで、それらが本書の骨格となっているようだった。
本書のプロモーションメッセージとしては、
》「疲労には順番がある」
》「回復には設計図がある」
》本書では、この考え方をベースに
》“どう休めば回復できるのか”を
》誰でも実践できる形にまとめています。
》頑張る人ほど、休み方を知らない。
》だからこそ「回復を学ぶこと」が大切だと思っています。
と語られていた。
でも、多くの読者は「学ぶこと」よりも「それをやれば疲れが取れる」という簡潔な方法を求めていると思うので、「疲労のメカニズム」を理解した上で、自らが「設計図」を策定することを勧める本書は、もしかしたら「面倒くさい」と感じさせるかもしれない。
ただ、「これを着たら疲労が回復します」と謳う「リカバリーウエア」は、刹那的な気持ち良さを提供はするものの、その当人が甘受している「疲労」の根本原因を解消するわけではないということが、F君の卒業後の問題認識の核心だったのだから、「それをやれば疲れが取れます」という具体策を列挙することは、本書の本質からは外れることとなる。
私としては、「第6章 疲労とストレス」に記されていた、
》ストレスのスイッチが入りっぱなしになること(交感神経優位が続く)
》ストレスを受けた後に「オフ・回復モード」に戻れなくなること(副交感神経に切り替わらない)
という2点が、F君が示す疲労問題の核心であると感じた。
本書に記された様々な対処法はいずれも、上記を「回復」できるようにすることに焦点が当てられているので、それだけを頭に入れて本書を読めば、「面倒くささ」は回避できると思う。
いずれにしても、とてもよくまとまった本で、「疲労回復」を必要とする方の参考になる良書といえる。
最終章では、「疲れにくい身体」を作るためのアプローチの核心ともいえる「休育」について取り上げられているが、欲を言えば、これらの様々な技法についての具体的なやり方を示してくれると喜ばれるのではないかと感じた。もちろん、これ以上記述が膨らむと1冊には収まりきらなくなるので、次の書に期待したい。
Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男