先日、大学院生とランチを食していた時、突然相談された。
「アレルギー性鼻炎のレーザー治療を勧められたのですが、先生はどう思いますか?」
なんでも、鼻水と鼻詰まりがひどくて、耳鼻科で見てもらったところ、「レーザーで焼いてみますか」と勧められたのだとのこと。
そもそも、「炎症」は、傷ついた組織を修復する際に起こる生体反応であり、「治している過程」の表れである。だから「炎症を抑える」ということは「傷を治す反応を止める」ということなのであり、「治さない」ということを意味する。もちろん、腫れや痛みや発熱などの辛い症状から逃れたいという気持ちもわかるのだけれど、安静に休んでいればそのうち緩解するのだから、本来的には放置する方が良い。
でも、抗炎症剤や解熱剤など、炎症の症状を抑える薬も普及しているし、鼻炎のレーザー治療も広く行われていることは間違いない。ただ、一度そのような対症療法に委ねると、本来の炎症反応が抑圧されて、免疫系の反応が進みにくくなる。早い話が、風邪を引きやすくなって治りにくくなるのだ。
あにはからんや、件の学生も、鼻炎が始まる前には咳や痰に悩まされていたとのこと。以前から、抗生物質や鎮痛解熱剤に頼っていたらしい。
「休めば直る症状が長引くのは休めないからで、休めないのは論文を書かなければならないからなので、休めるようになるまで症状を我慢した方が良い。それよりも、どうしたら論文が進むようになるかを考えよう。」
と、アドバイスした(というか話題をそらした)。
といっても、そのように語れたのは、本人が「レーザー治療」に後ろ向きだった(それゆえ私に相談した)からなのであって、受けたいと思っていたのであれば止めなかっただろうと思う。
もとより、どんな治療であれ、当人が良かれと思って選ぶことなのだから、その苦しみを患っていない私がとやかく口出すのは僭越至極。なによりも、当人のこれまでの考え方や態度をくみ取りながらの「アドバイス」になることは言うまでもない。
それにしても、医薬に頼る人たちがいかに多いことか。
「じつは、多くのお医者さんはなるべく薬を飲まないようにしているのだよ」
とも、件の学生には教えてあげた。
Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男
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