先週末から那須に滞在している。
那須での冬の愉しみは「薪ストーブ」。
8年前の夏に戸建を購入した際に、勧められて薪ストーブを設置した。なんでも、那須町では薪ストーブの購入に補助金を出していて、設置業者が代行申請してくれて、補助金分を割引してくれたのだ。補助する理由が、「薪ストーブはエコだから」ということらしい。
薪はバイオエネルギーであり、原料となる木が成長する時にCO2を吸収してきたので、燃やしたときに排出されるCO2は、地球温暖化の原因となるCO2排出としてカウントされないということがその理由。エアコンの電気も化石燃料にかなり依存しているし、灯油暖房は、燃焼時のすべてのCO2が地球温暖化への負荷となる。
だから私は、秋になるとトランク一個分(1立米)の薪を購入し、那須滞在時には毎晩薪ストーブで部屋を暖めている。洗濯物もすぐに乾くので、毎晩のように洗濯機を回して、翌朝にはすっかり乾いた衣類を着用できる。
購入時に置いてあった2台の灯油ファンヒーターはいつでも稼働できるのだけれど、朝方の暖に使う以外はほとんど稼働していない。18Lの灯油タンクは、年に1回補充するだけで、薪だけで暖かく過ごすことができる。薪ストーブは調理にも役立つので、冬はガスの使用量も少ない。化石燃料を節約できるという意味では、薪ストーブの効用は絶大だ。
と、思っていたのだけれど、3年ほど前から少しずつ疑問を感じるようになった。
そもそも、夕方から夜まで6時間程度稼働させたとして、燃やす薪は8~10本程度。正確ではないが、控えめに見積もっても、容量は40L・重量は20kg程度だろう。灯油に換算すると、18Lタンクの半量分を毎日消費していることになる。朝から晩まで一日中稼働させたとしたら、その倍量だ。
しかも、灯油ファンヒーターの場合は、部屋の中にすべての暖気が排出されるので燃やした燃料の熱量はすべて部屋を暖めるために使われるのだけれど、薪ストーブの場合は、多くは燃焼室で発熱するとはいえ、煙突から戸外に排出される熱量もバカにならない。というか、原理的に薪を燃やすためには上昇気流が必要なので、煙突から暖気を漏出させることは必須なのだ。ということは、部屋を暖めるのに必要な熱量が同等だとしたら、灯油ファンヒーターに比べて、薪ストーブの燃焼量は多いわけで、(もちろん発熱量とCO2排出量はほぼ比例するので)薪ストーブの方がCO2排出量が多いことは自明なのだ。
といっても、もともとは大気からCO2を吸着した薪を燃やすのだから、化石燃料を燃やすのに比べたら地球環境へのCO2負荷がほとんどないこともまた自明のこと。
ということを、私は信じていたのだけれど、どうして疑問を持ったのかと言えば、最近私の別荘地で、宅地開発が進んでいて、もともとあった木が根こそぎなくなっていく光景をたびたび見てきたからだ。そこで切り取られた木は、その場で細かく刻まれて薪になっていく。そういえば、この数年間は、そこここの雑木林が開墾されて太陽光発電パネルに変わってきたのだけれど、そのように切り開かれた森林から伐採された木材を燃やしたのだとしたら、せっかく吸着したCO2を大気に解き放すだけで、そのCO2が再吸着されることはない。
薪ストーブがCO2負荷を増やさないと言えるのは、伐採した跡地に新たな木が植林されて、その成長時にCO2が吸収される場合に限られるわけで、少なくとも、「私が薪を燃やす」というローカルな局面では、CO2を排出している(=地球温暖化に貢献している)ことは間違いないのだから。
「薪ストーブはエコだ」という言説は、地球上の森林が減らないという条件が満たされた場合のマクロな現象なのであって、私たちは、自身が燃やしている薪の代わりに、新しい林が育っていることを信じるしか、自身の行為をエコだと信じる根拠にはならないのだ。
こういう、面倒くさいことを考えるのが、私の悪い癖。
と反省しながら、今晩もせっせと薪を燃やし続けている。
Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男