縁あって私は、2年ほど前から日本スイミングクラブ協会(SC協)の理事を務めることになった。
といっても、これまで水泳の指導スイミングクラブの経営はおろか水泳の研究にもほとんど関与したことはないので、スイミングクラブで起こる様々な事象について勉強を重ねることが最初の仕事だった。最近では少しずつ質問程度の発言はできるようになったが、まだまだ勉強は欠かせない。
今月初めに送られてきた協会の機関誌「SC協News」の冒頭に「料金改定を総括すると550円(税込み)アップが最多!」という3ページにわたる記事が載っていた。「コロナ禍の経営環境の変化でスイミングクラブの料金改定が続いていた」とのこと。最近では、ウクライナ危機に端を発するエネルギー価格の高騰や人件費増(賃上げ)圧力もあるので、料金改定は自然な流れだし、経営感覚としては当然のことなのだと思う。
記事を読んでいくと「週1回1万円台は僅か12クラブ」との見出し。標準的な「学童週1回コース」の月会費が1万円(1回あたり2,500円)を超えたのは12クラブだけで、中には「週2回で1万円(1回あたり1,250円)以下」のクラブもあるとのこと。参加する子どもの親にとっては、家計の中でやりくりして捻出するわけだから、「1万円」という月額は心理的にも大きなハードルなのかもしれない。
でも、本当に世間の人々は「安いクラブ(指導)」を求めているのだろうか?
話は変わるが、昨年末から今春にかけて頻発した鳥インフルエンザの影響で、1,500万羽以上が殺処分となり、供給不足から鶏卵の価格が高騰した。昨年秋までは10個入り1パック200円程度が安値相場であり、スーパー特売では160円台で購入できることもあった。それが今では少し落ち着いたとはいえ、通常で250円程度、安くても200円を下回ることはないような雰囲気。たまに200円以下のパックを見つけても「小型サイズ」。おそらくはこの価格帯で「値ごろ感」が形成されていくのだろうと思われる。もちろん、家計にとっては痛手だけれど、電気代やガス代などの有無を言わせぬ値上げや、パンやうどん・乾麺などの小麦系食品やマヨネーズなどの値上げを「やむなし」と諦観している方も少なくないと感じている。
実は、我が早稲田大学でも値上げが断行された。といっても来年春以降の入学者に適用される授業料について約6.7%の増額。「昨今の物価高騰をはじめとする本学を取り巻く状況を総合的に勘案し」と説明されているように、値上げの波が生まれている時期であるがゆえに世間の理解も得られるとの判断なのだと感じられる。これは正規学生の学費なのだけれど、一般の人々に開放しているオープンカレッジ(公開講座)などの受講料もこれに合わせて増額することが想定される。
ところで、この公開講座の中にも「スイミング」のクラスがある。
この10月から始まる全10回の「らくらくスイミング」の受講料は、会員33,191円(ビジター37,646円)。一回当たりにすると3000円超。先に述べたように、スイミングクラブの受講料に関しては、「1回2,500円(月1万円)」という心理的ハードルがありそうなのだけれど、我が早稲田大学の公開講座の値ごろ感は「1回3,000円+税」。おそらくは来年以降これが6%値上げされたとしても受講生が定員割れすることはないだろうと想定される。
なぜ早稲田大学の公開講座だと「値ごろ感」が高くなるのかということは、少し研究してみても良いかもしれないと、「値上げの秋」に考えてみた。
Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男