先週、大学時代の研究室の指導教授と久しぶりで会食した。
前回の会食は10年以上前のこと。顔を合わせたのも5年ぶりなので、向かい合った会話は、業務上のことが大半だったけれど、とても楽しかった。
そんな中、彼が
「毎朝、今日は何をしようかと考える」
と語る。即座に
「私なら、今日は何をするのだったっけ?」
と、スマホのカレンダーを見ながら考えるなと思ったのだけれど、口には出さずにいた。すると、
「時間はくすり」
という本があるとのこと。
初めて耳にしたフレーズだったのだけれど、とても味わい深い言葉だと感じた。
確かに、傷や疾病を治すのは身体自身だし、その治癒プロセスには時間がかかる。慌ててせっかちに治そうとしてクスリに頼るよりも、身体自身が癒す時間に身を任せることが最良のクスリになるのではないか。最初はそのように思い浮かべたけれど、聞き続けていると、どうやら少し違うみたい。
早速、同書を買い求めて読んでみた。
著者は、大正12年生まれ(もうすぐ100歳)の女性。薬剤師として創業100年の「ヒルマ薬局」の2代目として働き続けてきた方が、言葉を紡いでいた。
「1.好奇心はくすり/2.継続はくすり/3.ぬくもりはくすり」
と、続いた最後の章が
「4.時間はくすり」。
その第4章の最後に、
「朝目が覚めたらその日の役割があるということ」
という言葉がおどる。
朝目覚めたら「今日は何をするのか」と考えている私は、いわば「役割」に踊らされているだけの存在のような気もしてきた。毎朝起きたら、
「今日は何をしようか/今日の役割は何か」
と考えることができるのは、老境の至りなのだと確信した。
久しぶりの恩師との対話をきっかけに、人生のヒントを得たような気がした。
ところで、その「ヒルマ薬局」には覚えがあった。
ちょうど、今月(3月)のウォークの途中で、志村一里塚を越えて小豆沢公園に向かって左に曲がる角に、その薬局があったのを思い出したのだ。なんでそのことを覚えていたのかというと、ちょうど、見次公園から国道17号を越えて志村一里塚に差し掛かるころ、スタッフがダジャレをしゃべっていて、それを聞きながら目についた薬局の名前をもじって、
「夜でもヒルマ薬局」
としゃべろうとして、あまりにもくだらないので言葉にしなかったのだった。
同書を読んで、改めて、ダジャレのネタにしなくて良かったと、しみじみと感じ入った。
Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男