昨日朝、神戸で開催されたウォーキング学会に参加するために新幹線に乗った。
東京駅で自由席特急券を購入し、発車1分前の広島行き《のぞみ81号》に乗車。
幸い車内は空いていて、右窓側(E席)に座れた。すぐに動き出した列車の右を走っていた上野東京ラインの電車を(新橋駅の手前で)追い越した際、第一ホテル東京の姿が目に入る。
「この辺りは《ゆかりウォーク》で歩いたなぁ」
などと思いながらぼーっとしているといつのまにか品川駅のホーム。
10名ほどが乗り込んできたけれど、私の座った3号車はまだまだ空席だらけ。
と、車窓を見ると、見たことがあるような街並。
「西大井はもう過ぎたかな?もしかしたら多摩川を超えたのか?」
などと考えていたら、多摩川を通過した。つまり、西大井を過ぎたあたりの大田区の光景だったということ。田園調布から千鳥町・池上あたりまでの六郷用水を歩いた折、新幹線のガード下をくぐった時の思い出が蘇る。
多摩川を渡ると武蔵小杉。と思いきや、見慣れたはずの対岸(多摩川駅あたり)からの光景が現れないことに違和感。スマホのマップで現在位置を調べてみると、新幹線と並行する横須賀線の武蔵小杉駅は多摩川を渡ったところで左にカーブして、武蔵小杉駅では南武線を北から南に交差していることが分かった。私の記憶に残っていた武蔵小杉の高層マンション群は右手後方に過ぎ去ってしまっていたということ。
新横浜までの右手には、東横線から田園都市線(あざみ野~青葉台あたり)にかけての丘陵が広がっているはず。と、目を凝らしたのだけれどあまりよくわからない。そのうちに、新横浜のプリンスホテルが現れる。サッカー日本代表戦で横浜スタジアムから新横浜まで歩いて新幹線で帰った記憶が思い浮かぶ。
さてさてと、持参した朝刊を読み始めたのだけれど、ふと気づくと右手に富士山。と思う間に三島駅を通過。
「そういえば、昨年のウォーキング学会は三島(順天堂大学)だったなぁ」
と、一年前の講演の反響を思い出した。コロナ規制のワクチン証明書までチェックしていたけれど、あの晩の懇親会は2年ぶりの居酒屋飲み会で盛り上がったなぁ、などといきなり「飲み会」の記憶。
そうこうしているうちに、静岡駅を通過。思い浮かんだのは、「桜エビとシラス丼と静岡おでん」。
無性にシラス丼が食べたくなる。と同時に、静岡市での学会の際にわざわざ焼津に宿泊して酒肴を愉しんだことを思い出す。静岡~焼津は魚料理がおいしい。
「神戸(三宮)についたら何を食べようか?」
などと思いを巡らすうちに、大井川を渡る。
「そういえば、この近くの酒屋で日本酒を買ったなぁ」
などと、思い出すのは酒と酒肴のことばかり。
その地点の地図を確認すると、島田~掛川あたりでは、海岸からはずいぶんと離れたところを通過しているようだ。「御前崎」にはまだ行っていないし、そのうち、熱海から浜松あたりまで、各駅停車で下車しながら食べ歩きをしてみようかな。などと思いつくのだけれど、たぶん10日以上はかかるだろうし無理だろうなと、いきなり現実に戻る。
名古屋についたころには、シラス丼を食べたいと思っていたさっきの記憶さえ風化してしまった。
思い起こせば、豊橋でも名古屋でも岐阜でも京都でも、思い出すのは飲み食いか歩いた記憶ばかり。新幹線には何度も乗ったけど、これまでの私の30年間ほどの出張人生の大半は、飲食の記憶で占められているようだ。
ふと、三宮の居酒屋チェーンで開催されるその晩の懇親会では何が出てくるのかと想像した。
結局、その日の懇親会では、「これからの学会のありよう」がしきりに議論されて、(20年前から10年以上も事務局長を務めていて)その場で最も古株の私には、「これまでの学会の変遷」を語ることが求められたため、飲み放題プランのハイボールを次々と口にしながらしゃべり続けた記憶しか残っていない。
これまでの懇親会の中で、「食べたもの」ではなく「語ったこと」の記憶が残ったのは、今回が初めてなのかもしれない。と、しみじみと私の「出張人生」を振り返ったりした。
ところで、来年のウォーキング学会は「徳之島」での開催。
次はどのような記憶が残るのだろうか?
Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男