本日、健康講座の参加者(Mさん・70歳代女性)から掲題の質問を受けた。
今は、起床後すぐに家を出て6時ごろまで歩いているのだけれど、昼食後に歩くと食べたカロリーが消費されて好都合だということを耳にしたのだという。
私は、
「生活習慣(時間帯)は人によって異なるので、Mさんが最も歩きやすい時間帯で良いのですよ。」
と勧めて、Mさんの生活時間(行動習慣)を尋ねてみた。
起床は朝4時ごろ(就寝は22時ごろ)で、ウォークを終えてから朝食の用意をして、昼食後には30分ほど昼寝しているとのこと。
「昼はもっと眠りたいのだけれど長すぎると身体に悪いようなので」
とおっしゃるので、
「昼寝を我慢して歩くのは生活リズムを乱すことになるのでやめた方が良いですよ」
とアドバイスした。
でもこれはあくまでも、Mさんが「これまでの生活時間をあまり変えないこと」を前提とした話。「あまり変えない」のだから、ウォークの時間帯もあまり変えない方が良い。というか、朝4時に目覚める生活が日常で、起床後すぐに朝食を摂る必要がないのなら、起床から朝食までの時間帯が「空いている」ので、ウォークに充てるには好都合だろう。
もし、6時半からのラジオ体操が習慣化している方ならば、体操会場までの前後に(遠回りするなどして)歩く時間を確保するのが好都合かもしれない。
だから、もしMさんが知人からラジオ体操に誘われて、その楽しみが習慣化したならば、「6時に帰宅していたウォーク」が「6時半前にラジオ体操会場でゴールするウォーク」に代わるかもしれないし、もしそのお仲間と「ラジオ体操後のウォーク」を一緒に楽しむようになったとしたら、「6時までに朝食を終えてラジオ体操会場に向かい、体操後にウォークを楽しむ」という生活習慣に代わるかもしれない。
もしそのような「生活習慣(行動時間)の変化」がないのだとしたら、今続けている「朝食前のウォーク」が、Mさんにとっては最も良いウォーキング時間帯だということ。それを、「食事後に歩いてカロリー消費する」という原理だけに従って、ご自身の「生活原理」を変えようとすると、しばらくの間は「生活リズムの乱れ」というストレスに苛まされる可能性が高くなる。
もちろん、「生活習慣を変えない人生」が最善だと言うつもりは決してない。
長い人生の中では、新しいことへの挑戦は数知れないことであろうし、毎日毎日同じことの繰り返しだけの人生に満足しない方もいるだろう。たとえ70歳や80歳を超えた方であっても、新たな行動への挑戦心を持つことは大切だ。
私としては、これまでに取り組んだことのなかった様々な活動に是非ともチャレンジしていただきたいし、ウォークの習慣を持たない方が「歩いてみたい」と思ったならば全力で応援したい。
では、それまでウォーク習慣を持たない方がウォーキングを始めようとした場合は、何時ごろに歩くのが最善なのだろうか?
これもまた、先ほどのMさんへのアドバイスと同様で、
「それまでの生活習慣(行動時間)の中で、最も無理なく空けられる時間帯を探す」
ということが、肝要なのだ。
「瘦せるために歩く」という目標を掲げたとしても、「食後のウォーク」が最善かどうかはわからない。重要なのはそれが新たな生活習慣として定着するかどうかなのであって、「同一時間(距離)のウォークでカロリー消費を最善にする」ということではないからだ。せっかくの理論も、歩く習慣が定着しなければ絵に描いた餅にすぎないのだから。
Mさんは、「無理のない生活時間を使う」という言葉をご自身の資料にメモして、会場を去っていった。
Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男