那須の車に常備していたボトルガムが空になった。
数年前に運転時の眠気止めとして購入したのだが、100粒ほどの中身がこのたびようやく底をついたというわけ。
運転中に眠気を催すといっても、1回の走行距離は高々30kmほどで、眠気を感じるタイミングはあまり多くないし、じっさいに100粒ほどのガムが底をつくまでに5年以上要したわけだから、一回に2~3粒ほどの消費量から計算してみると2月に1回ほどしか頼りにしていなかったのだということがあらためて発覚したのだった。
でも、やっぱり最後のガムを噛み終わって空になったボトルを目にしてみると、なんだか不安になる。ほとんど噛んでいなかったと言っても、そこにガムがあるのとないのとでは、ずいぶんと心持が違うようだ。いわば運転時の保険のようなものなのだろうか。
それはさておき、スーパーでの買い物のついでに(ちょうどレジの前においてあったので)同種のガムを購入しようと手を伸ばして驚いた。なんと、800円ほどもしたのだ。思わず、元の棚に戻して、本当に購入すべきなのかどうかをよくよく吟味してみた。
「よくよく」というのも言い過ぎだし、かつては1包7枚のガムを100円で購入していたことを思い出すと、100粒のガムが800円だったとしても驚くようなことではないのだけれど、「たかがガム」としか思っていなかった私にとっては、それは衝撃の体験だった。
結局、そのボトルの横に別の袋売りガムが300円ほどで並んでいたので、そちらを購入して元のボトルに移し入れた。
数年分のガムの値段が800円かとためらった挙句に300円のガムを選ぶというのは、なんとも貧相な性根ではないかと自分でも呆れた。しかも、新しいガムを噛んでみて「やっぱり以前の(大手メーカーの)方がおいしかったかもな」などと感じてしまう自分に情けなく思ったりもしたのだけれど、今回は300円の袋入りガムで一件落着したというわけ。
ところで、移し替えた際に元のボトルの表記をしげしげと眺めていたら、またびっくり。
その(元の)ガムは「キシリトール」という特別の甘味料を使用していて、「歯を丈夫で健康に保ちます」と謳われていたのだが、「1日摂取目安量」として「1回に2粒を5分噛み、1日7回を目安にお召し上がりください。」と記されていたのだ。
「1回に2粒を5分、しかも1日7回」???
私は、そのガムに「眠気覚まし」の効能を求めて「眠気を感じた時に2粒」という噛み方をしていたのだけれど、それはこの商品の効能とは全く異なる使用法だったということ。
本来の使い方をしたとしたら、100粒ほどのガムは1週間分という計算になる。いってみれば「ジェネリック医薬品」を選ぶような行為だったのかと改めて考えなおした。
もちろん、「ジェネリックのガム」なんて存在しないし、「歯を丈夫で健康に保つ」という効能を達成するためには元のガム(キシリトール)が必要かもしれないのだけれど、単に「眠気覚まし」の効能しか期待していない私にとっては、ガムの中にキシリトールが含まれている必要は全くなかったということ。800円に驚いて300円の袋ガムを購入した行為は、決してせこくて貧相なのではなくて、不必要な効能(成分)を求めなかっただけのまっとうな行動だったようだ。
私の心の支えとなってくれる運転席脇のガムのボトルは、たった300円分の補充によって、これから数年間の私の運転を支えてくれることになった。
Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男