昨日は、一昨日(17日)に開催された魚住サロンの概要を踏まえて、「自身のからだの状態に気づくこと」の大切さについて述べた。
その懇親会の場で、魚住先生が、その日のクライアントの状態を改めて解説しながら
「そうしかならない」
と言い放った。
Fさんの肩の動きが滞っていた(動きづらかった)ことに関して、
「動かないのではなくて、動かそうとしていない」
のだという。
当然のことながら、ご本人は「動かそう」と試みるのだけれど「動かない」から苦しいのだし、「動かした」ときに「痛み」を感じているわけだから、「動かない」という状態を「動かそうとしていない」というのはいかにも乱暴だ。
でもそれは、Fさんの「意思」の問題なのではなくて、「脳(神経)と筋肉の連関」の問題なのだと理解すると腑に落ちた。
つまり、筋肉(三角筋)が硬直して動かなくなった状態に陥った時、筋肉自体が固まって動けなくなってしまっているのではなくて、「それ以上動かすと無理が高じて痛みが生じる」という状態を先取りした脳が、筋肉が動いてしまうことを妨げているのだという。
それゆえ、肘・肩(上腕骨・鎖骨・肩甲骨)の関係性の中で、もっとも筋の緊張がゆるむポジション(中間位)を探し出して、上腕筋(二頭筋・三頭筋)や肩周辺の筋肉がゆるんだ状態で、「自然に動く方向」にゆっくりと動かしながら、緊張せずに動くようなポジションを探ることで、脳が「その動きを許してくれる」というか、「動かすことに抵抗しない」状態に持っていくのだという。
つまり、
「動かないのではなくて、(脳が)動かそうとしてない」
というのは、その「動かそうとしていない」状態に抗って無理な動きをしようとするのではなくて、「動けるポジション」の範囲内だけで動かそうとすることの大切さを説く言葉だということ。
まさに「そうしかならない」という状態を見つけて、「そうしかならない」動きを誘発するのが、(硬直をほぐす技の)ポイントだということだ。
それに続いて、
「挙げないから挙がらない」
「動こうとしないから動けない」
「立たないから立てない」
「歩かないから歩けない」
とも、魚住先生は言葉をつなぐ。
肩を動かすことも、肘や膝を曲げ伸ばしすることも、立つことも歩くことも、脳が邪魔(制限)している状態に抗って動かすのではなく、脳が邪魔しないような楽な(自然な)動きを導きながら、徐々に動きの幅を広げて、脳がその動きを邪魔しないように導いていくことによって、無理な(痛みを伴う)動きが消滅していくのだろうと、私には感じられた。
生まれたての赤ん坊が「立つ・歩く」を修得するまでには、途方もない時間と経験を要することは私たちには自明のこと。そこには「立とう・歩こう」とする生命の意思がある。普段から動かない(動かさない)身体でいながら、いざというときにいつでも動けると思い込んでいるのは私だけではないだろう。
「脳が動きを忘れないようにする」
ということを肝に銘じて、普段から動いていたいと思う。
Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男