「ヒトのからだは皮膚・筋膜・筋肉のつながり~実践編~」の読み方(3)本書は、読んだだけで理解・修得できるものではない。

まず、最も重要なことは、本書は魚住先生がご自身の認識を昇華・抽出した記述であるということ。いわば、魚住先生にとっての「メモ」のような役目を果たすものであって、魚住先生と同じレベルの理解・認識に至っていない方が本書の文字を読んだとしても、魚住先生の認識を理解することは困難だということ。

 ならばなぜ本書が配布されたのか。

それは、「これを読んだだけでは理解できない」ということを前提として、「理解できないことを探求しよう」と思う気持ちを抱いてもらえたらと願う、いわば「秘伝伝授」の心得として頒布したものだからである。

 「わからないところは尋ねて会得してほしい」

ということが魚住先生の意図なのだから、

 「文字だけでこっそり理解したい」

と思う方が容易に理解できるようには記載されていないということ。

 さらに重要なのは、本書ではきわめて複雑な思考体系を基盤とした「整え方」が簡潔に記されているため、一つ一つの記述は極めて難解であり、その文字面を読んだだけで理解できる文面はほとんどないということ。特に「実践技法(2~12章)」については、機能解剖学などの参考書を手元に置きながら、一文一文の記述を実際に試してみて、効果を体感しなければ、体得するまでには至らないだろう。もちろん、巻末「16.付録」に記された解剖図を参照したとしても、本文の文字面を補うことは容易ではない。というか、そもそも、個々の筋肉名称(起始・停止)ならびに機能について、そらんじられる程の素養がなければ、魚住先生の簡潔な言葉からそのアプローチをイメージすることは困難だろう。

だから、大切なのは、「文字面から操作技法をイメージしようとすること」を諦めることだ。「文字面」ではなくて、そこに問題を抱えたクライアント(あるいはそのモデル)がいて、実際に試みてみること。そして、その体験の中から、所定の目的が達成できたかどうかを確認すること。「何のために」その操作を行い、その操作によって所与の目的が達成できたかどうかを常に確認すること。そのうえで、もう一度、本文解説を読み直して、自身の達成した(あるいはできなかった)事柄の是非を検証してみることだ。

そのように、一歩一歩、実践技法を検証することで、「魚住先生が提案しようとしていること」をイメージするとともに、それを批判的に検証する作業によって、「実践編」をさらに発展させるアイデアを持つこと。それが、本書読解のカギとなる。

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