WWNウエルネス通信 (10月10日):「楽に歩く~学会での反響~」

昨日、順天堂大学三島キャンパス(保健看護学部)で開催された日本ウォーキング学会で、「楽に歩く~エクササイズからの脱却~」と題する講演を行った。

冒頭で座長から「斬新なテーマ」と紹介されたのだが、事務局からも「タイトルに間違いはありませんか?」と事前に確認されたほどなので、よほど違和感を与えたのだろうと想像した。

日本ウォーキング学会は、2000年から2012年まで私が事務局長を務めていて、大会を運営する立場だったので、自ら「講演者」になることはなかった。今回は25回大会ということで、5月に「特別講演」を依頼された折には「25年間を振り返る」というのが私の役割かとも思ったのだが、最近私が執心している研究課題を素直に開陳することが大切だろうと思いなおして、上述のテーマにしたのだった。

講演の内容は、以下のようなことである。

  • 「健康のためのエクササイズ」という考え方がある。これは、筋肉や心臓を鍛えるために、身体に負荷をかける技法である。
  • 一方で、「痛みを解放する」ということも健康寿命の延伸に有効であり、そのためにはできるだけ身体に負荷をかけずに「楽に動く」という動き方を修得することが肝要だ。
  • 健康づくりのために「正しい歩き方」が推奨されているけれども、「楽に歩く」という考え方はあまり広まってはいない。この学会でも、「身体に負荷をかける(健康のための)歩き方」だけではなく、「楽な歩き方」についても研究開発しては如何だろうか?

これが意外に受けた。

講演後の質問の中でも「ためになった」とか「これまでに指導してきた中で無理強いしていたこともあったと反省している」などの言葉もあったし、午後のシンポジウムの中でも何人もの演者が「楽に歩く」というフレーズを復唱してくれた。なによりも、大会事務局を担当した先生から「パラダイムを変えられた」という賛辞をもらったことが、なによりの驚きだった。

思えば、「身体を鍛える」という営為においては、「如何に負荷抵抗を与えるか」ということが重要テーマであった。そのために、エアロバイクのような抵抗負荷装置が開発されてきたのだし、ゴムバンドのような抵抗用具が活用されたりもした。「ウォーキング」がエクササイズの技法として活用される際には、「歩幅を大きく」とか「速度を上げる」というようなやり方で「負荷」を増加させることができる。「負荷」が増えることで、筋肉への刺激を増やしたり脈拍を高めたりすると同時に「エネルギー消費量」を高めることができるようになる。でも、歩行時には空気抵抗はほぼゼロなので、その負荷抵抗のほとんどは着地時に足裏が受けるブレーキ力なのだ。それが、膝や腰に「衝撃」として作用する。つまり、筋肉や心臓に負荷をかけたりエネルギー消費(脂肪燃焼)を増やすためには、その分だけ、足裏から膝や腰への衝撃負担を受けることになる。「負荷をかけること」ということは「身体が受ける負担」と同じことだということ。それが「健康づくり」の手法であるとしても、それは同時に障害の原因にもなる。丈夫な人ならば「負荷」があっても怪我はしないけれど、身体に痛みを持つ人にとっては「負荷」自体が苦痛になることもある。要は、「使い方」しだいということ。

講演の後に、色々な方と対話する中で、私自身にも様々な気づきがあった。

やっぱり生の「学会」は面白い。

Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男

http://wasedawellness.com/

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