本日は、品川講座の2回目。
表題のテーマで講話と実技を行った。
まずは、前回の「3つの感染症」=「身体的感染症、心理的感染症、社会的感染症」の話題を復唱した。
心理的感染も、社会的感染も、「感染」という言葉の本来の用法ではないものの、単なる「比喩」とも言えないほどに、あたかもそこに「ウイルス」がいるかのように人から人に感染して発症する。その「心理的症状(不安・恐怖)」や「社会的症状(嫌悪・偏見)」という症状は、それ自身が自分を苦しめるとともに、さらには本当の「身体的感染」を助長する(感染しやすくなる)という悪循環を引き起こす。私たちは、人と人との社会的関係(人間関係)に依存してしか生きられない生物に進化しているのに、「嫌悪・偏見」を余儀なくされた「社会的感染症」の患者は、これからの世の中でますます「生きづらく」なってしまうのだ。
というようなことを冒頭に話した後に、本当の「感染」のプロセスに話題を転じた。
多くの方は気づいていない(初めて聞くような)話題だったようなのだが、ウイルスが身体(粘膜)に付着すること自体は「暴露」といって、「感染」ではない。
医学的意味での「感染」というのは、粘膜に暴露(付着)したウイルスが、受容器細胞に取り込まれて複製・増殖されること。手指消毒とか手洗いとかは、「暴露」を防ぐ人為的な行為で、それも大切なのだけれども、「感染」自体を防ぐことも大切。
「感染」を防ぐ、最初(入口)での免疫の仕組みは、「咳・痰」や「くしゃみ・鼻水」。受容器細胞がウイルスを取り込む前に、ウイルスを捕捉してやっつけることができれば「感染」しないのだ。受容器細胞に取り込まれてウイルスが複製・増殖されると、1個のウイルスが100個以上に増えてしまうので、それが体内に発散した状態で免疫系が作動すると、大げさで厄介な作業になって、発熱も炎症も大きくなってしまう。もちろん、それが軽微で済めば重症化しないのだが、免疫系が過剰に反応すると重症化するし、ひどくなると死に至る場合もある。
その免疫系の機能には個人差があって、ウイルスが侵入(暴露)したからといって誰もが感染するわけではない。だから「感染しにくい身体」をあらかじめ用意しておけば良いのだし、「不安」や「嫌悪」と言った第2,第3の感染症によって、「感染しやすい身体」に陥れたりすることは愚の骨頂なのだ。
そこで、「感染しにくい身体を作る」という話に転じる。
そのために必要なのは、以下の4つ。
・軽運動(活動的な日常生活)
・バランスの良い食事(腸内環境を整える)
・休息と安眠(心身の緊張をなくす)
・不安やストレスを避ける(情報に惑わされない)
中でも、「バランスの良い食事」は、「言うは易し、行うは難し」。
「何を食べるべきか」などという「栄養学的視点」で整えようとしても、たいていは失敗する。重要なのは「結果」。「何を食べるか」ではなくて、(腸が整えられた結果として)「何が出ていったか」。つまり、排便状況のチェックなのだ。そのポイントは「快便」。
腸内環境が整っていれば、気持ちの良い排便ができる。
そのように話した後に奥田さんに引き継いで、「軽運動」の実技。
「椅子からの立ち座り」をクリアしたうえで、「腹筋」。
マットの上に体育座りをした状態から、両手をお腹に添えて徐々に上体を後掲していく。頭がマットに近づくにつれてだんだんときつくなるのだけれど、奥田さんが模範演技を見せると、皆がそれを真似して後ろに倒れてしまう。
「軽く腹筋が緊張するところで止めるんです」
と助言しても、皆、腹筋で支えられなくなるまで頭を下ろそうとしてもんどりうっている感じ。
「ハミングをしながらやってみてください。ハミングが止まってしまったらやりすぎなんです。」
と、助言したところで、皆が腑に落ちたようだ。
そうなのだ。「軽運動」はあくまでも「軽く」なければならない。「きつくならない体の動かし方」を修得することもまた、「感染しにくい身体づくり」の要諦なのだと、私も学んだ。
Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男