【23】歩き方講座~驚愕の大発見:その2

 「右、左、右、左」と言ったら足が出てきた…と言いながら動きを見せてくれた方は、「右」の声で「右脚」を、「左」の声で「左脚」を前に出していたのだった。「歩き方を育てる」と題して進められた講座の休憩中に、その「大発見」があった。

 「何が発見?」といぶかしく思う方もいるかもしれない。しかし本来、「歩く」という移動動作は、「身体が前に進む」ための所作である。その原動力になっているのは、足裏が地面から受ける力だ。だから「歩く」ときに重要になるのは、前に出ていく側の脚《遊脚》ではなくて、地面からの力を受けて身体を前に進める《支持脚》のはずだ。実際、歩く際に力を発揮しているのは支持脚の筋であり、脚を「前に振り出す」ために使われる筋力は極めて少ない。

それなのに、「右」という声に反応して動いたのは右脚で、しかもその右脚は、《支持脚として地面を押す》のではなくて、《前に振り出す》ように反応するということ。おそらくは、多くの日本人(もしかしたら西洋人も)にとって、歩きの基本は「脚が前方に振られること」と思っている方が多いのではないのだろうか。

ということに気づいたのが、私が驚愕した「大発見」だったのだ。

そうなのだ。私たちの多くは、身体を前方に進めるために地面から力を受ける支持脚よりも、前方に動いていく脚の方に意識が向いているのではないか?

 そこで、実際に皆様がどのように意識しているのかを、「緊急アンケート」させていただいた。設問は「右足から歩くときに前に出るのは《左・右》のどちら?」結果は、97人中85人(87.6%)が、右足から歩く際に前に出すのは「右」と回答した〔「左」が11名、「どちらとも言えない」が1名/性・年代の影響なし〕。

 予想通り、大多数は「右脚を前に出す」、つまり、講座の休憩時間中に遭遇した「右・左」という声に合わせて「右脚・左脚」と足を前に運んだ方の意識は、日本人の大多数の抱いている共通意識といえるだろう。

 「右足から歩くときに前に出るのは《左・右》のどちら?」という設問に戸惑った方々もたくさんいらっしゃった。実のところは、「右足から歩く」と意識したときの「右脚」が、前に振り出される《遊脚》になるのか、あるいは、地面を踏んで身体重心を前に送り出す《支持脚》になるのかという、「左・右」の意識を問いかけようとしたものだった。

 だから、「右」と回答した方は、「歩くときには脚が前に出る」という意識に支配されているのだろうし、「左」と回答する方は「歩くときには足で地面を踏む(脚を後ろに送り出す)」と意識しているのだろうと想定していた。

 「歩く」という動作を、「脚が前に出る」と感じるのか「脚を後ろに送りだす」と感じるのかは、「歩き方」を支配する大きな要素になる。じつは私も、このことに気づくまでは、「右足から歩くのだから右が前に出る」ということを疑っていなかったので、当初は「ほとんどの方が《右》と回答する」と思っていた。だから、「左」と回答する方が少なからず存在したことが意外だったのだが、それでも、多くの方々は《脚が前に出る》という意識で歩いていることが分かった。

(続)

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