【22】歩き方講座~驚愕の発見!

 健康のためには《楽に歩く》ことが大切だ、と気づいてから10年後。私が会長を務めている「早稲田ウェルネスネットワーク」で一緒に活動している奥田文子さん(保健師・看護師、健康運動指導士、早稲田大学非常勤講師)とともに、年配の方々向けの健康講座を開いた時のことだ。

テーマは「歩き方を育てる」。

 そもそも「歩き方」なんて、これまで誰かに教わって来たことではないし、皆が皆、物心ついたころには「歩ける」ようになっていたはずだ。それに、良い歳をしたご高齢(ほとんどの方は私よりも年上)の皆様に対して、「育てる」という言葉がどのような意味を持つのか? などと自分で設定したテーマに疑問を持ったのだが、それはさておいて。

 まず、奥田さんのレクチャーが始まった。床に置いた踏み台を使って「昇り降りする時に膝が痛い人はいますか?」と尋ねる…と思ったら、いきなり「足の裏は敏感ですか?」という問いかけ。

靴を履いて歩くとき、「小さな石ころでも踏んだら感じますよね」「靴下に穴が開いていたらすぐに分かりますよね」と、「足裏は意外に敏感なんですよ」と指摘した後で、「靴の履き方」をレクチャー。

「靴はぴったりと履くのが大事」「サンダル、下駄、おしゃれな靴、履く靴によって歩き方が違う」「靴に合わせようとすると変な歩き方になる」メモを取る人が多くなってきたところで実技に移行した。

 椅子に浅く腰かけて、どちらかの膝を前に出し、「動かしているのはどこですか?」と問いかけて、「腰を動かしている」という回答を導く。しかし奥田さんは、

 「肩も一緒に動きますよね? 膝を動かすと腰から肩にかけても一緒に動く。これが、赤ちゃんの頃から学んできたことなんですよ。」

 「歩くというのは重さを移し替える行為なのです。」

 「お尻に受けている重さを足裏に移し替えると『立ち上がり』が楽ですよ」

と、続く。どんどんと、皆の意識が奥田さんに向かって集中していく。

 そして休憩時間となった。どなたかが、奥田さんに質問している。どうやら、自身のリハビリ体験を話しているようだ。何人かが集まって、そのやり取りを聞き始めた。奥田さんがその内容を皆にお披露目したところ、ご本人がその当時の状況を解説してくれた。

 半月板の損傷手術後のリハビリをしていたが、歩き始めようとしてもなかなか足が出ない。ところが、「1、2、1,2」と号令をかけて初めて足が出てきた。さらに「右、左、右、左」と言ったらまた足が出てきて…。

 奥田さんが、「中村先生、歩き方が育ってますよ!」と叫んだ。でも私は、もっと大きな“発見”に驚愕していた。

 「右」の声で「右脚」を、「左」の声で「左脚」を前に出していたのだ!!

 話が長くなりそうなので、続きは次回に…(続)。

(JWIコネクトに連載中。閲覧はアプリから→ https://yappli.plus/jwi_sh

コメントを残す