表題の書(小林武彦著)を読んだ。
これは、前回記した「なぜ絶滅?」の疑問から興味を抱いたものなのだが、要約すると、
》「個体の死」が「種の進化」の源であり、
》「種の絶滅」が「多様な生物種」の存在をもたらした。
とまとめることができるだろうか。
もちろん、新書とはいえ、200ページ(10万文字)を超える成書であり、「生物の誕生」から「生物の進化の過程」、「種の絶滅と個体の死」「様々な死に方/寿命の意味」などなど、丁寧に解説されている。また、細胞や遺伝子の話になると、少し専門的な記述も重なるのだが、「死は生命の連続性を支える原動力」という言葉には、特に首肯した。
今年刊行された書のならいとして、「おわりに」には「新型コロナウイルスの猛威」について触れられていて、「ヒトは無力で脆弱な存在であることを思い知らされた」と記されているのだが、そもそもが「生と死」についての解説書なので、「コロナウイルスの猛威」は、本書を刊行の大きな原動力となっているのであろう。
「おわりに」には、
「生き物は利己的に偶然生まれ、公共的に死んでいくのです」
と述べられているが、これは、
「生と死、変化と選択の繰り返しの結果として、ヒトもこの地球に登場」することができ、
「死があるおおかげで進化し、存在している」ということらしい。
私たち一人ひとりにとっては、自身の人生(命)が何よりも大切だし、「公共的に死ぬ」なんて言われても、決して「人(公共)のために死ぬ」なんてことを望む人はいないだろう。
生物学者にとっては、「個体(自身)」の人生が「種(人類)」の存続の中の一コマだと思いきれるのだろうけれど、これは凡人にはなかなか思い至れない思想である。
だけれども、
「死は現在生きているものから見ると、生きた《結果》であり《終わり》ですが、長い生命の歴史から考えると、生きている、存在していることの《原因》であり、新たな変化の《始まり》なのです。」
と言われると、なんだか納得しそうな気もする。
「多様であることを大切にし、変化を好み、そして間違え、反省し、人に共感して笑ったり泣いたりして人生を送れたら最高ですね。」
という結語は、おそらく万人が納得する名言だろう。
Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男