WWNウエルネス通信 (7月19日):「スマホ脳~運動というスマートな対抗策」

「スマホ脳」という書を読んだ。

著者は、スウェーデンのアンデシュ・ハンセン氏。「スウェーデンで今もっとも注目されているメンタルヘルスのインフルエンサー」とのこと。2016年に刊行した「一流の頭脳」という書では、「運動するだけでストレスに強くなり、記憶力や集中力がアップする」ことを数々の論文を引用して示し、国内で大ベストセラーとなっただけでなく世界20か国で翻訳出版されたそう。

2000本もの論文を発表している現役の精神科医でもあるハンセン氏は、「一流の頭脳」でブレイクした後に、テレビのトークショーやニュース番組にも次々と登場し、心と身体の健康に関しては今スウェーデンで最も影響力を持っているとの評だった。

本書の内容を要約すると次のようになる。

  1. スマホ(タブレットも含めたデジタル機器)は、印刷・鉄道・電話・テレビに続く画期的技術革新であるが人間の脳を魅惑支配する最新のドラッグと言える。
  2. この魅惑的な道具は、私たちの集中力や考える能力を減衰させ、メンタルヘルスを阻害する。とりわけ、子どもの精神や知能に悪影響を及ぼすので、アルコールや依存性ドラッグと同様に使用を制限したほうが良い。
  3. スマホ依存(しょっちゅうスマホをチェックしたり、SNS通知に反応する)から脱却するためには、使用時間をコントロール(制限)して、代わりに別のこと(読書・運動・会話など)を行う。特に、軽運動を習慣化することで、集中力アップなどの脳機能アップにもつながる。

まあ、20万年におよぶ人類進化の過程を振り返って、「人類はデジタル機器に適応するようには進化していない」と断じることや、「鉄道や電話・テレビに適応できた私たちの脳も、スマホ生活には適応できない」と断言することには、私としてはいささか異論をはさみたくはなるのだけれど、スマホ依存生活が様々な悪影響を与えることには100%異議はない。

だから私は、スマホを手に取る時は、それを便利に使いながらも、「今わたしはスマホに心を縛られている」と意識し続けることを忘れないし、集中して仕事するときや睡眠中はスマホを近くにはおかないようにしている。

2019年に刊行された同書は、2020年4月に「コロナに寄せて~新しいまえがき」が追加されたのだが、そこでは、「人間の身体は、大勢が感染症でなくなるという現実に基づいて進化した。免疫システムもその一つだが、感染を回避する行動も同様。だから、感染した情報を欲する衝動もある。だから、ニュース速報を見るのをやめられない。」と述べたうえで、その衝動に応えるスマホ(デジタル機器)が「インフォデミック(大量の情報による疫病症状)」の誘因になって、「脳がハッキングされる可能性がある」と、警告を発している。

「運動というスマートな対抗策」を同時に示してくれてもいるので、昨今の「不安を煽るだけの健康情報」とは一線を画している。心を豊かにしてくれる良書だと思う。

Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男

http://wasedawellness.com/

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