4月1日。早稲田大学では入学式が執り行われた。
その式典の合間に1時間ほどの猶予があったので、同僚教授(H教授)とカフェでくつろいでいた折に、H教授が、
「ほとんどの関節を動かせるようになりました。」
とつぶやいた。
H教授と私は、15年以上にわたっていくつかの授業を二人で担当していて、授業が始まると週に1度は必ず一緒になる。とにかく向上心と研鑽欲が強くて、スポーツビジネスの専門家なのだけれど、どんな事でもとことん調べて究明精通し、こと身体の仕組みについても、時々私の知らないことを指南しようとするほどなのだ。
今回も、その延長で、どうやら(H教授が最近取り組んでいる)身体メインテナンスの手法を私に伝授したいと思いついたようだった。
テーブルの上に自身の左手甲を見せながら、
「ここがDIP・PIP関節。そして、MP関節・リスフラン関節…」
と、(手指を示しながら)各々を足の《関節》に見立てて、
「足の関節はみんな毎日動かしてます」
と宣う。
私も(前回述べたように)以前から、「横アーチの扁平」と「足裏感覚の劣化」に気づいていて、それがゴルフの技量にも影響していると常々感じていたので、
「なるほど、私も足裏感覚の研澄のためにも取り組んでみたいですね」
と応じた。
翌朝起床時に《足指関節操作》に取り組んでみた。
それまでは、足小指の関節などを意識したこともなかったのだが、手の小指と同じで確かに2つの《関節》がある。各々DIP関節、PIP関節という呼称もあって、その付け根の関節(MP関節)と合わせて、小指だけで3つの《関節》を動かすことになる。曲げ伸ばしの一方向動作しかできないとはいえ、一つの《関節》だけで2~3秒、3つの《関節》を簡単に曲げ伸ばしするだけで優に10秒はかかる。それを5本の指で繰り返し行ったら、片足だけで1分。その他のすべての関節が相手なので、片足だけでどんなに急いでも5分(両足で10分)はかかってしまうのだ。
でも、慌てずにじっくりと取り組んでみた。最初はなかなか動かせなかった(土踏まずと足甲の間に埋もれている)リスフラン関節も、何度目かにはわずかな動きが感じられるようになった。
と、だんだんと《関節》が動くようになってきたある日、驚きの発見があった。
(続)
Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男