今アメリカでペロトンというフィットネスバイクが流行っている。
「バイクフィットネス」というプログラムが提供されて、参加者はバイクの前面にある画面を見ながらインストラクターの“指導”を受ける。もちろん、リアルなジム(スタジオ)で参加することもできるのだが、たいていは離れた場所で参加する。
このバイクは、インターネットにつながっていて、前面の画面にインストラクターの姿が映るだけでなく、バイクの負荷や回転数の推奨値も表示されて、参加者はインストラクターの指示に従って負荷を変えながらペダルをこぐだけでワークアウトできる。その際、インストラクターは、カメラ目線(参加者一人一人を見つめているような視線)で励ましてくれるらしく、画面を見ながらこいでいる参加者にとっては、
「先生の目線がずっとこちらで、amazing! Beautiful! Great!とか言ってくれるので、気分良くて1 on 1で受けてる感じ。もう先生を個人的に知っているような気にさえなる。超オススメ。」(@happyneconyc、2019年7月31日)とのこと。
SNS機能も付加されていて、一緒に参加している方のデータを見て競ったりエールを送ることもできるし、終了後には、自分のデータを保管して、毎回の成果を確認することもできる。
プログラムは、ライブ配信されているものもあるが、ストリーミング(オンデマンド)も用意されていて、インストラクター、時間、音楽のジャンル、クラスタイプ(ビギナー、クライムなど)を自由に選ぶこともできる。“Tabata Ride”というHIITのプログラムもあるようだ。
ペロトンは、そのバイクが設置されているジムに行けば使える。アパートの共用ジムに設置されているケースもあるし、ペロトンバイクを部屋内に設置しているホテルもあるという。また、バイクを購入すれば自分の部屋で好きなだけペロトンプログラムを楽しむことができる。バイクの値段は20~30万円ほど(最安は$1,895)で、$39/月の会費を払うとバイクだけでなくヨガやストレッチ、メディテーションのクラスも受講できる。また、トレッドミル(最安値$2,495)のプログラムもある。もちろん、インターネットの通信料は別に必要。
残念ながら、日本ではまだ使えないようであるが、そのうち日本に上陸するかもしれない。
日本では、東急スポーツオアシスが2019年1月からリリースしたWEBGYM LIVEの中で同様のバイクプログラムを提供している。こちらはスマホを利用する“ホームフィットネス”で、当初は「5Gでフィットネス業界からスタジオが消える」などと注目された。コロナ下の2月からアプリのダウンロード数が急増したようで、2020年3月末時点で50万件に達したとのこと。
この他にも、フィットネス系のオンライン(ライブ/ストリーミング)配信であれば、SOELU、BeatFit、Lean Bodyなど枚挙にいとまがない。もちろん、エアロビクスなどのワークアウトが普及し始めた1970年代から、ビデオやDVDなどの媒体で映像プログラムが供給されていたし、それがネット配信されるようになったのも映画や音楽などと併行していたのだから、技術の進化に伴って配信形態が発展するのは自然の流れであろう。
ところで、“ヘルスケア・フィットネスアプリ”は、スマホ(4G)が普及した10年ほど前から普及が始まった。日本ではFiNCを筆頭として様々なアプリがリリースされているし、最近ではスマホ購入時に最初からインストールされているアプリもある。このようなアプリは、上述のあらゆるオンラインプログラムと同様に、すべて供給元のサーバーとつながっていて、ビッグデータとして活用されるべくスタンバイしている。このようなビッグデータはどのように活用されていくのであろうか。
もうひとつ、今年10月に発売されたNintendo Switch用フィットネスゲーム『FiNC HOME FiT』(フィンクホームフィット)も、これまでフィットネスクラブやジムに通わなかったターゲットに拡張するという意味で注目に値する。もちろん、ゲーム機との連携という意味ではWii FitやRing Fit Adventureの流れも重要なのだが、私が注目するのはFiNCのAIテクノロジー。今は、画面上のキャラクターが格闘技系のデモンストレーションを行うだけのようであるが、おそらくはAIによって設計された仮想キャラクターが画面上の《指導》を行うように発展するのではないだろうか。つまり、《人間》の指導者が不要になる世界である。
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