WWNウエルネス通信 (11月15日):「検査しても判明しない痛み」の原因?

前回は、先週行った品川講座の話を紹介しながら、「痛みの原因」について解説した。

要約すると、

・痛みの原因は痛い関節そのものではないことが多い。

・過去の様々な障害(傷痕)や疾病(ぜんそくなどの内部疾患も含む)が、現在の痛みの原因となることもある。

ということ。

もちろん、

 「膝をすりむいて出血した箇所が痛い」

 「転んで打撲した尻が痛い」

 「深爪したつま先が痛い」

などという《急性》の症状の場合は、原因が〈擦過〉や〈打撲〉にあるわけで、痛みの〈原因〉と〈症状〉とは部位も時期も一致する。

 これに対して、

 「膝が痛い/腰が痛い/肩が痛い/…」

といった関節に感じる《慢性》の痛みについては、その関節自体ことに関節内部に原因があるとは限らないということ。

 そのわかりやすい例として、「検査しても判明しない膝の痛み」について冒頭で示したのだが、30年前の整形外科の診察室では、「膝が痛い」という患者の訴えに対して、レントゲン検査で「異常なし」と判定された場合には、

 「気のせい(年のせい)」

と片付けられて、シップや鎮痛剤が処方されるということも多かった。

 でも、痛みや苦しみの原因が、別の部位や過去の出来ごとの場合もあるということを理解すれば、膝を検査するだけでは原因究明には不十分だということは自明のこと。さらにいえば、〈今痛い部位〉の痛みを鎮痛するだけでは本当の解決にならない。

ということから、先般の品川講座を始めたのであった。

 じつは私も、今から45年前、大学受験を控えてひどい腰痛を訴えて病院を受診したところ、

 「脊柱側弯症(骨盤上部の背骨が左右方向にS字状に弯曲している)」

と診断されたのだが、だからといって何らの処置も施されずにそのまま放置していたら、自然と痛みは消えていた。でも、「背骨の側弯」はそのままだ。その後、この世界で様々な研鑽を積んで様々な知見を得たが、その程度の(軽い)側弯はだれにでもあって、足を組んだりあぐらや横すわりの向き、あるいはショルダーバッグを掛ける側(が決まっている)など、日常の様々な動作の癖によって、肩の上下位置や骨盤向きの左右差などが生じて、それが背骨の側弯の原因となる。

 おそらくは、受験勉強での机に向かう座位姿勢が、左右にひずんでいたのだろう。当時はパソコンなどなかったから、左利きの私は、常に鉛筆を左に持って正面のノートに向かい、右側においた参考書や問題集を見ながら、毎日数時間も考えたり書いたりしていたのだから、肩も腰も骨盤も背骨も、ずいぶんと左右にひずんでいたのだろうということは想像に難くない。実際、今でもその左右差は残っている。でも、記憶をたどる限り、この20年ほどは腰痛を患ったことはない。

 ちなみに、高齢者が悩まされる慢性痛の多くは、肩・腰・膝などの関節に発症する。

 これは、痛みを脳に訴える受容器(センサー)が関節に集中しているからであって、その原因が関節に集中しているわけではない。というか、「膝に異常があるから膝が痛くなる」という考え方に縛られるのはやめたほうが良い。

 前回も述べたように、身体の様々な組織を結びつける〈膜〉は、身体を動かす際の力を伝達して、何度も繰り返される習慣的な動きに適応して、力が集中するポイント(多くは関節以外の箇所)の結合組織(コラーゲン)を変性させる。これを私は〈コリ〉と呼んだのだが、この〈コリ〉が蓄積されて〈膜〉に加わる力の伝搬を不全にすると、その力が作用する関節に〈痛み〉を感じることになる。

ところで、この〈コリ〉は、動きの〈癖〉の結果として身体に刻まれるので、あたかも身体の歪を〈記憶〉するかのような作用をもたらすのだ。身体に〈コリ〉として記憶された日常動作の〈癖〉は、だんだんと蓄積されてある時〈運動不全〉や〈痛み〉として姿を現すことになる。

また、〈膜〉は全身を包むとともに、足から頭までの動きを連結させているので、この〈コリ〉が動きの癖を増長させて、他の箇所の動きを不全にして、別の場所に〈コリ〉を生成させる。あたかも、ある場所にできた〈コリ〉が、自分の動作(動き方)に影響して、手足から頭蓋までのあらゆる箇所に〈コリ〉を伝染するかのように見える。

 このような〈コリ〉の連鎖は、姿勢の歪をもたらして、更なる〈コリ〉や〈痛み〉の原因となるのだ。

 では、この〈コリ〉=〈痛み〉を改善するにはどうしたらよいのか?

 先般の品川健康講座では、そこからさらに話を進めた。

(続)

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