JOYFITの店舗閉鎖が発表された。
https://joyfit.jp/important_news/5578/
全国展開するJOYFITチェーンの中では1割以下の店舗数だし、9~10月にも新規開店が続いたので、新陳代謝の表れともいえるが、店舗数が縮減したことは事実である。当然に、そこで雇用されていたインストラクターなどは移籍する必要があるし、代行需要も含めて店舗の閉鎖は仕事の縮減につながるので、影響を受ける方も少なくないだろう。
JOYFITを運営する株式会社ウエルネスフロンティアは、JOYFITと併せて高齢者福祉施設・デイサービス「ジョイリハ」も運営しているし、その親会社・オカモトグループは、21業種38業態、1000億円超の売り上げを誇る一大企業グループなので、今回のJOYFIT店舗リストラは多角経営の中での投資効率改善の一つなのかもしれない。つまり、《投資家・経営者》の立場から言えば、不採算店舗を保持して資金の損失を拡大することは許されないし、不採算部門縮減して利益を見込める部門に集中することは経営の基本態度といえる。でも、そこで雇用される人々にとっては、経営改善の一環として解雇されたり業務転換を強いられることは困苦を伴うことであり、止めてほしい(避けてほしい)と願うのが当然の態度である。
つまり、このコロナ禍という状況において、一方(経営サイド)の利益と、もう一方(インストラクターなど)の利益とは相反する
人材は、(物のように)経営者の都合で使ったり使わなかったりすることに馴染まないので、損益上は正しい経営判断であっても社会倫理上は好ましくないという場合もある。つまり、冒頭のJOYFITの例で言えば、経営効率改善の観点から正当化される店舗閉鎖も、そこで働く方々が不利益を被るようなことがあるとしたら正当化されにくいかもしれない。
でも、本当に大切にされなければならないのは、経営者でも働く人々でもなくて、お客様(会員)。だから、もし今回の店舗閉鎖に伴って、「行くべきフィットネスクラブが無くなった!」と困苦する顧客(会員)がいるのだとしたら、フィットネスサービスを享受していたそれらの人々の便益こそが守られなければならない。
では、今回のケースでは、「行き場を失って困惑する顧客」はどれほどいるのだろうか?
もちろん、それまでのサービスを享受していた方々にとっては、選択肢の一つが無くなるのだから不便が生じるのは当然であるが、その影響がどの程度のものなのかは注視しなければならない。
ただ一つ言えることは、今回のコロナ禍における店舗リストラは、ほとんどは「顧客の減少」に起因するということ。顧客が支払う会費や利用料が縮小することは経営者にとっては困ることなのだが、それは「顧客が決めたこと」。顧客から選ばれないサービスならば撤退するのもやむを得ない。つまり、上述の「経営サイド」と「指導者サイド」の綱引きは、それが顧客に選ばれている(喜ばれている)のならばお互いハッピーだけど、顧客に選ばれなくなったのだとしたら、その仕組みを(顧客に選んでもらえるように)変革しなければならないのは当然だ。
今般のリストラ対象は、施設店舗に備えられた器具やプログラムを利用したサービスで、「来場者の減少」という顧客サイドの都合によってニーズが少なくなったサービスだといえる。おそらくは、コロナ禍で生じた巣籠りやオンライン生活への転換に伴った「リアル店舗サービスへのニーズ減少」なのだろう。そうだとしたら、経営サイドが顧客のニーズに適うようにリアル店舗を縮小することも当然だろう。
もちろん、それに伴って社員が解雇されるような事態になるとしたら大問題だが、少なくとも、顧客ニーズの変化に伴って提供するサービスの内容を見直す必要があるのだとしたら、インストラクターも、これまでと同じサービス提供様式だけで生き残れるはずはない。
新時代のフィットネスは、(というかこれまでもそうだったのだが)より一層「顧客のニーズに如何に応えるか」という観点が重要になる。インストラクターにとっても、顧客(会員)のニーズ変化を見逃さない努力と知恵が求められるのだ。
(JWIコネクトに連載中。閲覧はアプリから→ https://yappli.plus/jwi_sh /Swim Partner #7にも転載)