先に(9月6日)、「病床にて再考したこと」と題する養老孟子さんのラジオ講演の話を紹介したところ、新宿区ウォーキング協会の小林さんから以下のような返信をいただいた。
》WWNウエルネス通信 毎回興味深く拝読しております
》今朝は 朝日新聞GLOBE9/6号を読んでいました
》世界はウイルスに満ちている‗読み応えありました
》コメントですが 「宿主とウイルス」
》 2 ふだんは潜むウイルスも宿主の体力が
》 落ちたとたんに姿を現す
》 4 ウイルスは宿主に病気をおこすが 宿主が
》 死ぬと生きられないので 共存を目指す
》宿主(自然宿主)とありました ご紹介まで
「ウイルス」つながりのお話だったので、その元記事の内容について、ここであらためて皆様に紹介させていただきたい。
⇒ https://globe.asahi.com/article/13696529
おそらくは、小林さんが紹介してくれたメッセージは、同記事に挿入されたイラストの説明文に記されていたもの。
イラストとともに読むと、そのイメージが実感しやすい。
それはさておき、「世界はウイルスで満ちている」という文言でgoogle検索すると、朝日GLOBEに掲載された記事が次々と現れる。その特集の趣旨は、
「ウイルスにも良いところがある」
という観点をほのめかすところから始まって、
「ウイルスは人にとって欠かせない存在」
ということを理解してもらうところにあると推察できる。
9月6日号の編集後記では、
「感染症をもたらし、人類の敵とみられがちなウイルスは《善玉》の顔も持っています。」
と語られていた。
昨今は、コロナウイルスを敵と断じて、それをいかにやっつけるか(少なくともその被害をどのように免れるか)という論調で世界が覆われていて、
「ウイルスは世界の多様性を保持する貴重な存在」
という視点をうかつに述べようものなら袋叩きに会いかねないので、表現の仕方はとても慎重で「真綿にくるんだような」編集の苦労がうかがわれる。
それでもこの特集記事には、
「ウイルスを敵にして、そこから逃げ回るだけの現状に疑問を持つ人」
には、その趣旨が伝わるような工夫がなされている。
このシリーズの他の記事を読んでみると、小林さんが教えてくれた言葉以外にも、次のような言葉に出会った。
⇒ 「あまり知られていないが、ウイルスは様々な恩恵を与えてくれている」。
⇒ 「生物はたくましく生きていくために常に変わってきた。その原動力の少なくとも一部は、ウイルスなどによって外から入ってきた遺伝子だった」
⇒ 今では風邪の原因ウイルスの一つになっている別のコロナウイルス(OC43ウイルス)は、19世紀末に日本を含む世界で大流行を起こしたが、100年ぐらいかけて普通の風邪になった。
⇒ ウイルスは19世紀の終わりに、人や動植物に病気を起こす悪者として見つかったが、それは例外的な「不幸な出会い」の結果に過ぎない。感染すること自体まれで、感染しても目立った病気を起こさないこともあり、進化の推進力になることさえあるとわかってきた。
⇒ ウイルスは、人類が出現するはるか前から、山や川と同じように存在していた。その根絶をめざすのは、山を片っ端から削って土砂崩れをなくそうとするようなもの。
⇒ 人という新参者がさまざまな場所に首を突っ込み、いろいろな生き物に手を出さずにはいられない以上、出合い頭の不幸な事故が今回のようなパンデミックになることはこれからもきっと起きうる。
「withコロナ」という言葉は、単に
「コロナウイルス感染を避けるための生活」
を指すのではなく、
「コロナウイルスと共生して(感染したとしても共に進化して)丈夫な体を作る」
という観点も含んでいると思いたい。