驚いた。前回の寄稿が配信された8月24日。
何気なくネット記事を見ていたら、NHK News Webに「サイゼリヤ、食事用マスクと1円値上げのねらいとは」との記事に目が止まった。
「味の素」の研究者から転身して2009年から社長を務める堀埜一成社長への取材記事なのだが、しゃべりながら食事ができるマスク「しゃべれるくん」の開発と、「釣銭を減らす」ことを目的とした「1円値上げ」の話題。サイゼリヤといえば、299円、399円、499円という価格のメニューが特徴だったのだが、これらを1円値上げして「すべてのメニューを50円単位のキリのいい金額にすること」で、釣銭を6割削減したという。「釣銭」は、感染予防の観点だけでなくとも皆が敬遠していたこと。「お客様が安心して食事していただける環境」とか「接触回数をいかに減らすか」という(もっともな)理由を述べてはいたが、「正社員を増やす」ということも含めて、「いろいろな問題を全部変えられるチャンスが来た」と力強く語っていたという結びの言葉が印象的だった。
前回述べたことであるが、「生活必需品」を取り扱うスーパーとかドラッグストアだけでなく、病院や福祉施設など、多くの業態は自粛要請の対象から外れたものの、飲食店やスポーツジムなど、自粛要請の対象となった業態の中には「不要不急?」と当たり前のように言われることに異議申し立てをしたくなる業態も少なくない。私としては、パチンコだって「生活必需の業態」だと思っているのだが、そのような私の個人的思いはさておいたとしても、自身が関わっている仕事が「社会にとって不要?不急?」ということに疑問を持たずに従順に自粛したのだとしたら、それは自己責任だと思う。それによって、営業不振になったり破産・破綻したりしたとしても、それは「そのようになる運命」だったのだと思うし、「ずるずると負債を引きずって傷口を広げることなく退場できること」に感謝すべきなのである。
同じ飲食店の中にも、「いろいろな問題を全部変えられるチャンスが来た」とチャレンジする経営者がいる。これはどのような業態にも当てはまる事であろう。
これが、今般の《コロナ禍》の後の成否を決める最大の要因だ。
Swim Partner 第5号(2020.9.8)に掲載