8月20日(木)、テレビ東京が放送した「日経モーニングプラスFT」をたまたま観た。
その中で、「ターゲットの株価が上昇」という話題が目に留まる。ターゲットは、米国のディスカウントチェーン大手で、コロナ禍の株価下落が一段落してから反発上昇したのだという。Jクルー、ブルックスブラザーズ、ニーマンマーカスなど、名門企業が次々に破産(11条)するなかで、底堅い業績を維持できたのは何故か。同番組では、「生き残った小売業業態の特徴」として次の二つの要素を挙げていた。
- 外出規制期間も営業を続け「生活必需品」を扱う(供給し続けた)。
- eコマース事業へ投資し、顧客の需要に対応した企業
日本でも同じである。緊急事態宣言の下で、「不要不急」のイベントや営業活動が自粛を要請された一方で、「社会生活を維持する上で必要な施設」については厚遇された。もちろん、「生活必需品」を扱う業態であったかどうかで「生き残り」の線引きがなされたのであったとしたら、贅沢品や娯楽業種などはとんだとばっちりと言えなくもないが、もし本当に顧客にとって「不要不急」な贅沢品やサービスだけを取り扱っていて、「不要」なものを「その気にさせて売り付けていた」だけなのだとしたら、その業態は遅かれ早かれ撤退を余儀なくさせられる運命だったのだ。私が若いころ執着したブルックスブラザーズがそのようなブランドだったとは決して思わないが、この30年以上私が買い求めていなかったことだけは確かだから、その間飛躍したユニクロなどと比べれば、「顧客ニーズ」への向き合い方が足りなかったのかもしれない。
それはさておき、同番組を持ち出すまでもなく、今般のコロナ禍で破綻する組織があったとしたら、それは「遅かれ早かれ破綻する運命にあった」ということで、「10年先取りして破綻した」という見方がおおよそのようだ。そうならば、厳しい状況を長々と止血しながら延命して最終的に10年後に破綻するくらいなら、今回の「コロナ禍」で破綻してしまったほうが影響(被害)は少なかったのかもしれない。
商売とは無縁な私がこのような放言をするのはスジ違いかもしれないが、ことスポーツに関しては、私も一家言持っている。
緊急事態宣言が出せるよう特別措置法の改正が議論されていたころ、「不要不急」のイベントの自粛が要請された。そんな中、日本ウォーキング協会(JWA)では、「ウォーキングイベントの原則中止または延期」を宣言していた。これは、JWA主催のイベントにとどまらず、あらゆる傘下団体やウォーキングクラブに通達されたのだった。結果として、3月以降、ほとんど(というかほぼすべての)ウォーク行事は中止された。私が主催する月に2~3回のウォークは「ウォーキングは不要不急ではなく必要な活動です」と宣言して継続していたが、私たちに協力いただいている「新宿区ウォーキング協会(自主クラブ)」では、自主活動も含めてすべての行事を中止した。普段は新宿区の要請を受けて様々なウォーク促進行事に協力している自主民間団体なのに、区から「自粛」を要請(実質上の規制)されたのだという。
日本国民のためにウォークの環境を整備促進する統括団体が、「不要不急の活動は自粛して欲しい」とする政府の要請に従って(大人数が参加する)主催行事を中止するのはともかくとして、高々30人程度が固まらないで歩くイベントまで一斉に「中止」を勧告するというのは、スポーツ振興団体にとっては自殺行為だと思う。
実際、歩数(健康)アプリのデータを見ると、感染拡大が懸念された3月から4月にかけて歩行歩数は大きく減ったようであるが、国民の健康保持に危機感を抱いた各種団体が「運動機会の確保」を4月以降に懸命に訴えていたというのに、ウォーキング協会が積極的に働きかけた形跡はない。当時の緊急事態宣言が発布されるにあたって、「屋外での運動や散歩は自粛の対象ではない」と政府の基本的対処方針に明記されたのにもかかわらず、それを承けない《自粛》の決断。おそらくは、「自分たちが《生活必需品》を取り扱っている」という認識を持っていなかったのであろう。
おりしも、ゴールデンウイーク前(4月21日)に、日本山岳・スポーツクライミング協会を筆頭とする山岳関係4団体が、「登山自粛」を呼びかけた。「万が一にも遭難事故に遭い救助されても、新型コロナウイルスの対応でひっ迫している医療機関に迷惑をかけることになる」と結ばれていたから、愕然を通り越して呆れ果てたものだった。
ただし、ゴールデンウイークも含めて騒動の間の近郊登山やハイキング実施者が少なくならなかった(国民が呼応しなかった)というのは朗報だし、「GoTo」が奨励される現在に至っては、もはや無意味な呼びかけだったとも言えるのだが、自らの使命を「不要不急」と認めるようなスポーツ組織や団体は、そもそも遅かれ早かれ破綻する(このコロナ禍で一掃される)運命にあったということだろう。
スイミング関連の組織・団体は大丈夫だろうか?
(Swimming Partner 2020.8.24号に掲載)