今模索されている「新常態(ニュー・ノーマル)」の要点として、前回、次のように述べた。
- 今年春から生起した様々な社会環境・生活様態の変化は、コロナウイルスの《せい》で(その対策として)起こったことばかりではなくて、そのほとんどは、「数年後に起こるであろう変化が一気に先取りされた」ということ。
- 今模索されている「新常態」は、「コロナウイルス感染予防」という観点から求められるというわけではなく、時代の流れの中であらかじめ準備されてきて、もしコロナ禍がなくても10年後には当たり前になっているであろうと想定された「常態」である。
- その新常態を表すキーワードは、「非接触/オンライン」であり。フィットネス・スポーツの分野にも広く当てはまる。
- これに対応して、従来の施設中心のサービスはニーズを減らして「オンライン型」が流行ってくるが、「施設型サービス」については、「非接触」を中核とした新たなサービス(プログラム)を開発することで、新たなニーズを取り込めるようになる。
- スイミングは、「施設」がなければ整理しない運動形態なので、「オンライン指導」の入り込む余地が(皆無ではないが)少ないので、「非接触」のビジネスモデルを開発・提供すべきである。
1については、前回述べたので、ここでは2,3,4,5について述べることにする。
まず、「非接触/オンライン」というサービスの変革(新常態)は、これまでに準備されてきて、数年のちには当たり前になる変化の結果だ。
「非接触」というと、キャッシュレス(電子カード)のような決済サービスを想像する方も多いことだろう。確かに、このキャッシュレス化も、これまでに変革が模索・誘導されてきた変化であり、通信情報技術(ICT)の進化・変革の成果である。昨年の消費税増税に合わせて、「ポイント還元」という政策でキャッシュレス化を誘導したのも、「コロナ禍」を想定したものではない
それが、今般の「コロナ禍(感染予防対策)」と連動して、「ポイント還元」施策の期限が切れた今年7月以降も、着実に進行しているのだ。そのような「非接触」を普及するきっかけになったのが「コロナ禍」であったというわけだ。でも、それが「コロナ感染予防」のためなのか「便利さ(顧客サービス)の追求」のどちらなのかを究明することはナンセンス。つまり、それが時代の要請なのである。多くの国民にとって、この「コロナ禍」から脱却するための方法(メディア)として、「非接触」が希求され、そのさらなる帰結として「オンライン化」が進むのである。
そしてそれは、フィットネスやスポーツの分野でも例外ではない。我が早稲田大学でも、スポーツ実技(実習)のすべてがオンラインで行われており、各々の担当教員は突然のことに暗中模索を重ねた。グラウンドやアリーナ空間で行われてきた「実技指導」のうち、教授と学生との間の「言葉によるインストラクション」については、間にWeb(ネットワーク)空間を挟んだとしても色あせるものではない。この「オンライン授業」の模索が重ねられていくうちに、各種スポーツ指導のオンライン化が《常態》になっていくのであろう。そのオンライン化の指導技術開発に成功したスポーツ種目はますます発展していくであろうし、それを開発できない種目は、遅かれ早かれすたれていくことだろう。
では、スイミング(水泳)はどうなのか。じつは、上記「オンライン化」において、物理的施設・設備を必要とする種目・動作においては、それがどうしてもクリアできない障壁(ハードル)として立ちはだかる。つまり、「スイミング」については、「水のプール」をどうしても必要とする以上、完全な「オンライン化」にかじを切ることはほぼ絶望的なのだ。それでは「スイミング」は絶滅するのか?
私は、「オンライン化」が時代の宿命(必然)であるとはいえ、それが、絶対であると申し述べるつもりはない。通信技術の進化によって「オンライン帰省」は可能になるが、夫婦生活(生殖行動)は圧倒的な濃密接触を経なければ成立しないし、世の中にはオンライン化できない営みも多いのである。それならば、「スイミング」はどうすればよいのか?
(続)