「久しぶりです。コロナが落ち着いたら一杯やりたいですね。」
と、昨夜、福永哲夫先生からLINEが届いた。
「コロナが落ち着く前に会いませんか?」
と返したら、
「5月12日の昼飯時(11時〜13時)か翌13日16時以降は空いていますが。」
とのこと。
「凄いですね!ほとんど空いていないということですよね♪」
と返信したところ、
「そうなんです、全てゴルフで埋まっています。大変です!」
それはさておき、昨夜は
「新型コロナウイルスの感染を各地で拡大させないために登山を自粛するよう山岳の関係団体が呼びかけています」
というニュースをラジオで耳にして驚愕した。しかも、
「万が一にも遭難事故に遭い救助されても、新型コロナウイルスの対応でひっ迫している医療機関に迷惑をかけることになる」
と結ばれていたから、愕然を通り越して呆れ果てたものだった。例年は大型連休の前のこの時期に「遭難事故の防止を呼びかけている」とのことなので、それに替わるものとして公表したのだろうが、あらゆるスポーツの中でウイルス拡散のリスクが最も低いと思われる登山の振興に携わる団体が、「登山を自粛」と宣言することに驚愕したのである。
今般の緊急事態宣言が発布されるにあたって、「屋外での運動や散歩は自粛の対象ではない」と政府の基本的対処方針に明記されたのにもかかわらず、それを承けない《自粛》の決断。おそらくは、同日昼過ぎに発せられた「ゴールデンウィークも近づいてきたが、感染の拡散につながっていく危険性があるので、地方への旅行や遠出は控えていただきたい」という安倍首相の要請に応えたものなのだろう。
それにしても嘆かわしいことだ。登山の振興を旨とする団体が「登山は自粛してください」と叫んでしまう状況に憂慮の念が堪えない。そういえば、日本ウォーキング協会でもウォーキングイベントの「原則中止または延期」を宣言してたっけ。そもそも、「如何にしたら安全にできるか」を世に宣伝しなければならない立場の統括組織が、《自粛》などという安易な対応で政府に追従しようとする。スポーツ振興団体にとっては自殺行為であろう。
私は、政府や諸機関の対応にケチをつけるつもりは毛頭ない。しかし、新型コロナウイルスの出現という事態に対して、「感染防止」なかんずく「人と人の接触を避ける」という方法論しか持とうとしない事態を、非常に憂慮している。それは日本政府だけではなく、世界各国、もとをただせばWHOが「ウイルス拡大防止」という戦略しかとろうとしていないことが根本原因なのだ。公衆衛生全般に責任を持つべき世界の中核組織が、「感染防止対策」の観点だけからしか旗を振ろうとしていないかのように見える。あるいは、もしかしたら旗振り自体をしていないのか…。数年前から、「これからは非感染症対策が重要」と唱っていたのは戯言だったのだろうか?
もとより、「感染防止」はウイルス対策の重要な手法であることは間違いない。しかし、「感染しても発症しないからだづくり」「発症しても重症化しない方策」「重症化しても死なせない医療」「死を迎えても嘆き悲しまずに受け入れる心を育み癒す」などなど、やるべき対策は星の数ほどあるだろう。確かに、人工呼吸器の増産や抗ウイルス薬やワクチン開発などの医療的措置には、世界中が力を尽くしているようなのだが、それが間に合わないからと言って「外出自粛」を要請することしかできないことが、今の行政構造の限界なのかもしれない。そういえば、今朝のニュースでは「うつ症状を訴える選手が急増している」と報じられた。「各国政府の外出規制によって自宅でのトレーニングを強いられる中、選手のメンタル面にも大きな影響をきたしているようだ」とのこと。スポーツ選手に限らず、自宅に閉じこもることで様々なストレス被害にさらされるというニュースも、最近は事欠かない。
ところで、今から80年ほど前のことであるが、戦争に向かう国家の危急事態下において為された国民精神総動員施策の中で「ぜいたくは敵だ!」というスローガンが喧伝された。この他にも、「欲しがりません勝つまでは」「日本人ならぜいたくは出来ない筈だ!」「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」「聖戦だ 己れ殺して 国生かせ」「進め一億火の玉だ」などなど、様々な戦時標語の中の一つなのだが、中学社会科の教科書にも載ったこのフレーズは、私の記憶からなくなることはなかったし、この“狂気”が、反論を許されない社会的共有精神だったのだろうということもうすうす理解している。
私は、運動やスポーツは、「感染しても発症しないからだづくり」に大いに貢献すると確信しているし、「感染防止」というお題を掲げながら「人と人との接触を避ける」という狭い了見だけを最優先に掲げて突き進もうとする社会のうねりをとても憂慮している。もちろん、くだんの「山岳関連団体」のように、自分たちが推進・振興している活動を「今は自粛すべき」として《ぜいたく》扱いする組織があったとしても非難するつもりはない。でも、少なくとも私は、ウォーキングや散歩はおろか、ゴルフでさえ、それを日常生活に取り込んでいる人々にとっては貴重な生活の糧であり、決して《自粛すべき活動》だとは思わない。
今、“Stay Home!”と叫ぶのは、「ぜいたくは敵だ!」と叫んでいた当時と同様の、社会的集団狂気である。
******** WWNスペシャル通信 (2020年4月22日配信)********