先週水曜日。中止されたウォークの替わりにゴルフ場に向かった。ゴルフ場は、今回のウイルス感染のリスクがほとんど皆無なので、私も安心してラウンドを楽しんだのだが、そのことは来場の皆さんもご承知のようで、ゴルフ場はとても盛況だった。もちろん、握手をしないとか近くの人と大声で話さないなど、基本的な感染予防エチケットは全員が承知しての上の話だが、コロナになんか負けないという意欲がみなぎっているのを感じて、とても充実した時間を過ごすことができた。
昨日(14日・土曜日)の安倍首相の記者会見の中でも強調されたのだが、集団での感染が確認された事例の共通点は以下の3つである。
1.換気の悪い密閉空間。
2.人が密集していた。
3.近距離での対話や発声が行われた。
この三つの条件が《同時》に重なった場合が「感染しやすい環境」ということ。そして首相会見では、「これら三つの条件が同時に重なるような場を避ける、もしくは、できるだけ同時に、重ならないように対策を講じることで、感染のリスクを下げることが可能です。」と述べるとともに、(学校が休校になって1日のほとんどを自宅で過ごしてきた児童・生徒たちへのメッセージとして)「健康管理、ストレス解消のためにも、人が密集しないようにするなど、安全な環境のもと、屋外に出て、運動の機会も作ってください。」とも呼びかけた。
私たちは、政府から「小・中・高等学校等への臨時休業の要請」が発表された2週間ほど前の時勢を受けて、「3月のウォーク中止」を決断した。ただ、昨日の安倍首相の会見で呼びかけられたように、「安全な環境のもとで屋外に出て運動の機会をつくる」ということは、子どもたちだけでなく高齢者を含む全ての人々にもあてはまることであり、ゴルフと同様にお互いに感染予防に配慮しさえすれば、ウォーキングは安全・安心な活動だと言える。
唯一、懸念されるのは、「往復の電車の中で感染するリスク」であった。じつは、多くのウォークイベントの「中止」の理由もそこにあり、私たちも、その懸念から3月のウォークを中止にしたわけであるが、よくよく考えてみると、「満員電車リスク」はどの程度なのだろうか。
まず、昨日の首相会見でも触れられたが、「人口1万人当たりのわが国の感染者数は、0.06人(感染者累計総数はチャーター便、クルーズ船の患者を除いて629名)」であり、そのうち、東京・神奈川・千葉・埼玉県内の感染者数は1/4の160名。ただ、今回のウイルスの体内増殖期間は14日程度であり、2週間前以前の感染者は、現時点で他人に感染するリスクがないと考えられている(隔離から解放される)。2週間前に行われた首相会見で「急速な拡大に進むか収束できるかの瀬戸際」と強調されたこの2週間の感染者数は、全国では389名であるが、首都圏内に限れば93名であった。この4県の人口は3,500万人超なので、1万人当たり0.025人(40万人に1人)に過ぎない。
もちろん、ここで「陽性」と判断された方々は、(一部の特例はあったものの)自宅待機などで他者への感染が予防されているわけで、私たちが恐れているのは、未検査感染者(症状はないがPCR検査を受けたら陽性になる者)なのかもしれない。厚生労働省(注※)は、「通常、肺炎などを起こすウイルス感染症の場合、症状が最も強く表れる時期に、他者へウイルスを感染させる可能性も最も高くなります。」として、(無症状感染者からの感染)可能性が低いことを示唆してはいるが、同時に「新型コロナウイルスについては十分解明されていないこともある」として注意を喚起している。私も無症状のものを検査する必要を感じていないのであるが、ほとんど皆無なリスクにおびえる人がいることも事実なので、無視するわけにはいかないと思う。
ところで、その「未検査感染者」については、検査を受けていないのであるからどの程度いるのかは推測の域を出ないが、1月に中国・武漢からチャーター便で帰国した829名の方々を対象とした検査で陽性と判定された15名のうち無症状の方は4名(約3割)であった。つまり、もし、首都圏居住者全体に検査したとして「無症状病原体保持者」をあぶりだしたとしたら、この2週間で新たに見つかる無症状感染者は、93名の約3割で30名程度なのではないかと想定される。さらに、無症状の方はウイルス増殖が盛んではないということなので、そもそも感染させるリスクが低い(今般のウイルス感染者のうち8割は他人に感染させない)のであるが、他者に感染させる可能性が発症者と同様だとしても、2割に相当するのは6名。つまり、この6名程度が東海道線、横須賀線、総武線、京葉線、宇都宮線、高崎線、中央線、山手線、京浜東北線などのJR線ならびに私鉄各線(計84路線)の満員電車のどこかに乗ったとしたら、その車両にたまたま乗り合わせた方が知らない間に感染してしまうリスクがあるということなのだ。6名全員が毎日電車を往復利用するとしても、自分が乗った電車路線を利用する可能性は7%。さらに、数十本もある朝晩の電車の、さらに6~10両のどれかで一緒になる確率を計算すると0.01%以下(車両の中で周囲に遭遇する確率はさらに1/10以下)になる。
もちろん、微塵でもリスクがあったら避けたいと思う方がいても否定するつもりはないし、自己判断がなによりも優先されることは間違いない。しかしながら、今、政府が恐れて自粛を要請しているのは、集団(クラスター)での感染なのであって、先の首相会見にあったように、学校が休校の子どもも外で遊んだり運動したりすることを妨げるものではないし、高齢者が外出することを自粛要請しているわけではない。
私たちに求められているのは、「健康管理、ストレス解消のためにも、人が密集しないようにするなど、安全な環境のもと、屋外に出て、運動の機会も作ってください。」と呼びかける首相の言葉を信用するのかどうかという一人一人の自己判断なのであって、私としては、この1~2週間を乗り越えた首都圏在住の私たちにとって、「満員電車が危険」と吹聴するのは、もはやデマと同じようなものなのではないかと感じている。
ただし、新型コロナウイルスよりも感染者の多いインフルエンザウイルスへの感染を予防する観点からも、電車で移動する際には手すりつり革への接触の際には手洗いや除菌するなどの普段から衛生意識が大切なことは言うまでもない。
皆様が、安全安心に健康の維持増進が図れるようになることを、なによりも祈念しています。
注※ 厚生労働省、「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」、https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html#Q6
(このメールはWWNの皆様に配信したものですが、拡散してくださって構いません。)
Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男