私の大学時代の同期で一番の親友の岡部宏生君は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者である。2006年の発症からほどなくして脚が麻痺して車いす生活になったが、3年後の2009年には呼吸筋(正確には呼吸筋をつかさどる神経)も侵されて、気管切開・人工呼吸器を装着した。もちろん、自分で呼吸できないのだから、しゃべることができない。以来、口と目の動き(今では眼球の動きだけ)を読み取る通訳者の介在で自身の意思を発信している。
その《発信》のほとんどは、各地で行われる講演や著書であるが、2014年にアイス・バケツ・チャレンジ(氷水をかぶってALS患者を支援する社会運動)が流行った時には、日本ALS協会副会長としてコメントを発信し、その後、同協会会長として、国会(衆院厚生労働委員会)で参考人として答弁したり、ホーキング博士追悼メッセージを発信したりした。まあ、私には遠く及ばない《出世》をしているわけだが、要介護5という認定をはるかに超越した《24時間フル看護》の状況に置かれている苦労を脇に置いたとしたら、その活躍は羨望の的と言える(本人も「ALSは、時々羨ましがられる程度の障害者でもあります」と述べている※)。
※ http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n426/n426012.html
そんな彼から、先日(4月14日)メールが届いた。
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大変ご無沙汰しておりますが、ますますご活躍のことと思います。
還暦をすぎてますが、やっていきたいと思っています。
久々に会いたいですね。
さて、このたび私は以下のような活動をするために、新しく法人を立ち上げました。
この法人の活動を一口に申し上げると、介護者が不足していることに少しでも改善の道を作りたいということです。
…(中略)…
どうか、中村様のお力添えを是非いただきたいと衷心から申し上げる次第です。
詳細につきましては下記をご覧ください。
■NPO法人境を越えてのホームページ
…(以下、略)…
—-
で、そのオープニングイベントを6月15日(土)に六本木ミッドタウンで開催するということと、クラウドファンディングに協力してほしいとの記載が続いた。
もちろん、すぐに返信して、昨日のイベントにも参加してきた。
その詳細は後の機会に譲るが、4000名超の会員を擁する日本ALS協会の会長職を後任に引き継いだとたんに新しいNPOを立ち上げて周りを巻き込んでいくエネルギーに、ただただ感心している。じつは私が、高齢者の生きがいづくりに取り組んだのは、彼がALSを発症するよりも前のことで、その当初から「寝たきり(要介護5)になっても夢を持って生きていける社会を目指したい」と構想していたのだが、私が《夢》として構想している間に、要介護5を超越した彼は自分の《夢》を次々に実現しようとしている。彼は自分のことを、「特殊な患者」と語る(※2)が、私にとっては理想像なのだ。
※2 http://www.kangocare.jp/index.php?message
関連記事: https://www.asahi.com/articles/SDI201609237955.html
Wasedaウェルネスネットワーク会長・中村好男
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