WWNウエルネス通信190127:インフルエンザ問題の要点~ウイルスか免疫機能か~

 前回、インフルエンザと診断された私の知人(高齢者)と若者の心持と行動を記した。

 公衆衛生学の観点からは、“ウイルスの感染と増殖”が大きな問題なので、インフルエンザ問題の核心は“ウイルス”に有って、それが人から人へと伝染すること、またその伝染を防止することがなによりも大事なことだと受け止める方も多いだろう。“うがい手洗い”や“マスク”によってウイルスが体内に侵入したり、他人に侵入させたりすることを防ぐことは、確かに大切なことであり、「外出を抑制する」という考え方を否定するつもりは毛頭ない。でも、前回紹介した私の知人の場合、本人はさしたる苦痛もないのに“インフル”と診断されたのだし、ウイルスが身体に侵入しても発症しない人も多いのだ。昨年(2017/18シーズン)のインフルエンザ患者数は2230万人で“過去最高”と報告されているが、裏を返せば“残りの1億人”は感染していないということ。それらの8割の国民には、“ウイルス侵入”が全く無かったのかと問えば、そんなことはありえない。かく言う私も、この数年間はインフルエンザ症状を発してはいないが、これだけ回りに“インフル患者”がいたわけだから、検査を受ければ陽性(ウイルス感染者)に認定されたかもしれないのだ。もちろん、感染していたとしても、そのシーズンのうち「5日間」しかウイルスを検出できないのだから、それを見つけるためには“5日おき”に検査をしなければならないので、“感染者(ウイルスが侵入した者)”の統計を取ることは不可能なのだ。厚生労働省に集約される「感染者」は、「症状が表れて受診した人」に限られているのだということは心に留めおかなければならない。

 なにが言いたいのかというと、“インフルエンザ”という症状は、“ウイルスが体内に侵入したかどうか”ということで決まるのではなくて、“体内に侵入したウイルスに克てたか負けたかで決まる”ということなのだ。じつは、そんなことは誰でも知っている。そうでなければ「予防接種」という考え方は成立しないのだ。予防接種によって、インフルエンザウイルスが身体に侵入してもそれを退治して発症しない(または重篤にならない)ように、予め体内の免疫環境を整えておくことが予防接種の目的だからだ。そして、ここで重要なのは、「予め免疫機能を整えておこう」とするのが「予防接種」の役割なのであって、わざわざ人為的に不活化されたウイルス(ワクチン)を体内に侵入させることそのものが重要なのではないということ。それはあくまでも「免疫機能を高める」ための手法の一つに過ぎないということなのだ。

 さて、結論である。世の中には様々な人がいて、インフルエンザに罹りやすい人たち(ハイリスク群)と罹りにくい人たち(ローリスク群)がいて、子どもや高齢者は「ハイリスク群」として案じられる。しかし、“罹りやすさ”は免疫機能の問題であって、免疫機能が高い人は、少々のウイルスが体内に侵入しても症状に表れにくい。つまり、普段から“免疫機能”を高めるような生活習慣を有している人は、うっかり予防接種を受けなくてもインフルエンザウイルスに打ち克つことが可能なのだ。前回紹介した私の知人(たいした症状がでなかったのにウイルスが検出された方)は、(予防接種は受けたようなので)ウイルスに対する耐性が整っていて、その身体に侵入したウイルスは(検出される程度には生き延びていたとはいえ)かなり減弱していたと考えられる。  「予防接種」も大切だけれど、「ウイルスに負けない身体(免疫系)を整える」ように心がけることが何よりの予防策だと、私は思う。

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