先日(12月7日)の日経朝刊(9面)に標題のコラムが掲載されていた。副題が「情報銀行へ一歩」。
ここで「イノベーター」として紹介されたノーニューフォークスタジオ・菊川裕也社長は、「センサーを付けて常時歩行データを収集できる靴を開発。三菱UFJ信託銀行と歩行情報を対価に変える実証実験を進める」という。靴にセンサーを埋め込むことで「スマートフォンより正確な歩数、さらに歩幅、速度、着地の角度やひねり、足が地面を離れてから着くまでの一連の動きがつぶさに分かる。歩き方は人それぞれで、靴は一度履いたら脱ぐまで同じ人。個人認証もしやすい」とのこと。
確かにそうだ。最近私は、左足の外反母趾(と扁平アーチ)を意識し始めたこともあって、一歩一歩の踵からつま先(母趾先)までの足圧を感じながら歩いており、同時に(特に左足)踵の外反角も意識しているのだが、まさに「歩幅、速度」に止まらず「着地の角度やひねり」などの動きがつぶさに分かれば、アーチの潰れ(偏平足)や外反母趾も予測できるだろう。なにより、歩様は一人ひとりに特徴的だから、足圧センサーだけで個人認証することも可能だろう。当然のことながら、その位置情報からスーパーの陳列棚やレジ前でたたずむ様子も即時にモニタできるようになるだろう。
私たちは、「歩数=身体活動」として健康との関連を検証・啓発しているが、「靴センサー」を通じた即時の個人健康情報を収集してそれを「対価に変える」という発想を抱いたことはなかった。まさに「イノベーター」。
菊川さんは「歩行はかなり奥深く、自分自身が改めて勉強している」とのこと。私たちとは分野を全く異にする方々が、「足や歩行の勉強」をする時代。私たちが、足から体幹ひいては口腔までのつながりを身体内部の事象として捉えて整体しようとしている影で(というか表で)、足を通じた歩様の分析を「ネット」を通じて外部と連携しようとする発想の広がりに、ただただ驚愕した。
ところで、現在はスマホの時代。私たちはスマホを通じて「情報収集」を行っているのだが、そのとき同時にスマホを通じて私たちの行動情報も収集されている。“どこで何分滞在した”という情報が即座に収集分析されて、その店の“評価”を求められることもしばしば。メールやニュースなどでは表に出ない(と思い込んでいる)私たちの思考や心情も、SNSを介したつながりの中では、おおっぴらに表出されている。だが、それは自らが発信することで、勝手に読み取られたりはしないはず。でも、靴やソックスのセンサーが、私たちの行動を身体の外へとつなげるとき、そこで分析・開発される「健康」は、「社会に紐付けられた健康」なのだろうと思い至る。そういえば、「特定検診・特定保健指導」だって、すでに「社会に紐付けられている」という意味では同じかもしれない。
- まさかとは思うけど、食物にセンサーが仕込まれていて、食べてから排泄までがモニタされるなんて世の中にはならない、ですよね?
※※ 昨日は、「足の左右差」について、どうでもよいような顛末を述べたが、本日はそれに続いて「歩き方の個人差と社会に紐付けられた身体と健康」のお話。私としては、昨日と今日はつながっているのだが、この関連を“結びつける”のは、私だけかもしれませんね♪